携帯が鳴った。
破損した携帯と並んで置かれた、
自分の携帯に手を延ばす。
そして画面も見ずに通話ボタンを押した。
『…はい』
『もしもし母さん、俺』
『…』
『もしもし、母さん?俺だよ』
『…なんの冗談?!』
『冗談ってなんだよ。俺だよ、俺。
それより、大変な事になっちゃって…
実は俺、車で事故っちゃってさ』
『…』
『自転車の女の子と接触しちゃって。
よけた先の家に突っ込んじゃって、
父さんの車グチャグチャになっちゃったんだ。
それで…』
『…やめてちょうだい…』
『怒るのもわかるよ。
けど、どうしても伝えなきゃいけないことがあって…』
『いいかげんにしてっ!!!!!』
『悪かったよ、でも少しだけ話を…』
『白々しい!!
なら教えてあげます。
息子が事故を起こしたと、
もうとっくに警察から電話が来ているの!
この意味がわかる?!』
『…』
『まだ言いたい事があるなら、言ってみなさいっ!!
っ、うっ…うぅっ…』
『母さん…』
『もうそんな風に呼ぶのはやめてちょうだいっ!!』
『…ゴメン……』
そういうと電話は切れた。
(こんな方法で詐欺を見破るなんて…)
改めて着信履歴に目をやる。
五分前、息子の携帯からのものだった。
【解説】
息子はすでに交通事故で死んだと連絡が来ていたため、
電話をオレオレ詐欺だと思ったお母さん。
ただ、実は幽霊になった実の息子からの電話だった。
『どうしても伝えなきゃいけないことがあって…』
とは一体どんな内容だったのだろうか…
実の息子からの電話だったと知ったお母さんは
果たしてどう思うのだろうか…。