これは私と彼とのお話。
「何でだっけ」
何が。
「確か交通事故だったねえ」
あぁ、そうそう。
「僕と君はその場にいたよね」
そうだよ。君の身体にも残ってるでしょ。
「僕の身体には傷跡が残ってる」
私も一生治らない。
「君には酷いことをしてしまったね」
謝らないでよ。
「でも謝らないよ。
僕が悪いのは重々承知しているけどね」
少しムッとするね、その言い方は。
少しは誠意を持って話してよね。
「さて、そろそろ僕は行くよ。
これでも忙しいんだ」
そう。忙しいならもう来なくてもいいよ。
もしくは、一緒に行こう?
私は一緒に来てほしいよ。
「僕はもう結婚したからね」
ならいいや。
この思いは胸に秘めておくよ。
もっと先まで。
貴方の妻のために。
「じゃあまた」
バイバイ。
彼は立ち上がり去っていった。
私が待ちきれなくなっちゃう前に、
早く彼が来るといいな。
【解説】
語り手はすでになくなっており、
彼がお墓参りをしている状況。
『君には酷いことをしてしまったね』
と、語り手は彼のせいで死んでしまった。
しかし彼は、
『これでも忙しいんだ』
とそれほど罪悪感は持っていないようだ。
『私は一緒に来てほしいよ』
「僕はもう結婚したからね」
『ならいいや』
という流れがあるのに、最後に
『私が待ちきれなくなっちゃう前に、
早く彼が来るといいな』
とあることから、いずれ彼を呪い殺しそうで恐ろしい…。