僕が学校から帰ると
毎日若いお兄さんが学校周りを走っている。
大学生らしく、いい体つきをしている。
運動が苦手な僕はお兄さんに憧れていた。
ある日僕の学校で火災報知器のベルが鳴った。
どうやら校庭の草木が燃えたようだ。
大事には至らなかったので、
みな、焼却炉の火の粉が燃え移ったとか
そんな話で事はすまされた。
その日からお兄さんが消えた。
そして一週間後、近くのデパートが燃えた。
どうやら放火らしい。
大きな火災だったので
テレビでニュースがやっていた。
ふと中継場所をみていると、
デパートの周りをお兄さんが走っていた。
そして一ヶ月後
お兄さんが僕の家の周りを走っていた。
【解説】
お兄さんが周りを走っているところが燃えている。
つまり、語り手の家が次に燃える場所。
学校の草木が燃えたのは放火かどうかわからないし、
お兄さんが放火しているかどうかもわからない。
もしかしたら、不運を撒き散らす人なのかもしれない…。
なにはともあれ、
語り手はこれから身構える日々が続くだろう。