【意味怖】意味がわかると怖い話まとめ

【意味怖】意味がわかると怖い話を読んで頭の体操を!捉え方は人それぞれであり、答えは一つであるとは言えません。解説も答えではなく、一つの捉え方。あなたがどう捉えたかを教えていただけると幸いです。


【意味怖】影踏み

スポンサーリンク

『かーげふーみしーましょっ』

 

月明かりの照らす住宅街の細道を歩いていると、
後ろから子供の高い声が掛かった。

 

振り返ると、
電柱の影の上に小さな人影が立っていた。

 

私の胸くらいの高さしかない人影……

 

けれど、文字通りの影。

 

上から下まで墨で塗り潰したように、
黒い人だった。

 

『かーげふーみしーましょっ』

 

そう語り掛けながら、
その人影が一歩、また一歩と近付いてきた。

 

白いビー玉のような目をして、
頭を右に少し傾けたまま、
摺り足で動くように腰より上を一切揺らさずに、
じわりじわりと距離を詰めてくる。

 

現実離れした光景に茫然としていたけれど
ようやく我に返り、
迫り来る異形から必死に逃げた。

 

捕まってはいけない。

 

人影の雰囲気が、
私にそう直感させた。

 

走って走って、
ようやく私の家が視界に入った。

 

『かーげふーみしーましょっ』

 

その声と共に、
奥に立つ反射鏡の細い影から
先程の人影が湧いて出てきた。

 

右に傾けた頭が、
カタカタと小刻みに、
そして不気味に振れる。

 

慌てて踵を返し、
この道を迂回する方向へと駆けた。

 

そして再び家が見えたと思えば、
またあの人影が物陰から生えてきた。

 

『かーげふーみしーましょっ』

 

その声がするたびに
あの化け物はズルズルと影から湧き出し、
私を執拗に追い回す。

 

最初は歩いていた人影も、
次第に早歩き……小走り……疾駆するようになっていた。

 

やっとのことで影を振り切って
我が家に駆け込んだ私は、
扉の鍵を締め
真っ暗な玄関に座り込んだ。

 

影を作る光がなければ、
あの怪物も出て来れないはずだ。

 

荒れた呼吸も、
少しずつ治まってきた。

 

『ブーッブーッ』

 

と、不意に携帯の着信バイブが鳴る。

 

そうだ、携帯で誰かに助けを請おう。

 

私の友達がこういう都市伝説等に詳しかったはずだ。

 

私はカバンを開け、携帯を取り出し――――

 

『かーげふーんだ』

 

 

【解説】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着信を示す携帯電話のライトで影ができてしまった。

 

影を踏まれた語り手はこのあとどうなってしまうのだろうか…

 

 

ただ、ここまでついてきたのであれば、

仮に携帯電話を取り出さなくても

家の中に一切の明かりをつけることもできないし、

近くまできていたという恐怖もあって

それはそれで発狂してしまいそうである…