閑静な港町の外れを一人歩いていると、
長蛇の列が目に入った。
最後尾の人に何の行列なのか訊いてみたが、
軽く一瞥されただけで答えてくれなかった。
持ってきた地図に目を落とすと、
どうやらこの先は岬になっているようだ。
きっと景色が良いのだろうと一人合点し、
私もその列に続く事にした。
並び始めて数十分、
列が進んでいるのはいいが、
左右は切り立った崖になっていた。
もはや人一人分の道幅しかない細道で、
一歩間違えば転落してしまいそうだ。
私の後ろにも多くの人が並んでおり、
引き返す事もできない。
一体この行列の先は、
どうなっているのだろうか……?
【解説】
『どうやらこの先は岬になっているようだ』
岬へと伸びる狭い一本道。
一人分の道幅しかないため、
引き返すこともできないし、
誰も引き返してきていない。
つまり、この長蛇の列は
飛び降り自殺を行おうとしている者たちの行列だった。
そのため、戻ろうにも戻れない語り手は
自ら飛び降りなくても
後ろに押されて語り手は死んでしまうことになるだろう…
『最後尾の人に何の行列なのか訊いてみたが、
軽く一瞥されただけで答えてくれなかった』
とあり、
最後尾の人でも驚かずに並ぶということは、
おそらく自殺志願者達が申し合わせてきたのだろう。
しかし、日本人は
行列が気になって並んでしまう人がたくさんいる。
語り手もその一人。
なので、この行列には
死ぬ気がなかった人も大勢含まれているだろう…