どうやら一週間後、中学の同窓会が開かれるらしい。
久しぶりにクラスメイトに会えると思うと胸も弾む。
あいつは元気かな?初恋のあの娘は結婚したんだろうか?
僕はインターネットで会場を調べながら、ワクワクしていた。
同窓会の会場は、界隈でも人気のホテルの一室。
集まった顔ぶれは、年こそとったものの、あの頃の面影が残っている。
僕は中学時代を思い出しながら、楽しそうな皆の顔を眺めていた。
そして、ふとY君が居ないことに気がついた。
無性にY君に会いたくなった僕は、皆にY君がどうしてるか聞いてみた。
「ねぇ、Y君、来てないの?」
すると、皆の答えは決まって「誰だっけ?」の一言。
薄情なやつらだ。誰一人覚えていないなんて。
僕はとても悲しい気分になり、泣きながら一人会場を後にした。
【解説】
『どうやら一週間後、中学の同窓会が開かれるらしい。』
『僕はインターネットで会場を調べながら、ワクワクしていた。』
『僕は中学時代を思い出しながら、楽しそうな皆の顔を眺めていた。』
同窓会が開かれる「らしい」
インターネットで会場を「調べ」
楽しそうな皆の顔を「眺めていた」
泣きながら「一人」会場を後にした。
中学の同窓会が開かれることを「らしい」という言葉から間接的に知り、
会場の場所を自分自身で調べ、
誰に話しかけられることもなく、皆の顔を眺め、
誰も相手にしてくれず結局一人で会場を後にした。
つまり、語り手はこの同窓会に呼ばれていなかった。
「誰だっけ?」
という言葉も
「君、誰だっけ?」
という意味合い。
もしかしたら、Y君といつも一緒におり、
影的な存在としていたのかもしれない。
だから語り手もY君も
みんなの思い出の中には存在していなかったと言える。
『あいつは元気かな?』
というのもY君に向けての言葉だろう。
しかし…そうなるとどうやって同窓会が開かれることを
知っていたのだろうか?
Y君自身は呼ばれていたけれども、
語り手に伝えてY君自身は行かなかったのだろうか?
そのように連絡を取るのであれば、
Y君に無性に会いたくなるだろうか?
もしかしたら、孤独が寂しすぎて
Y君にすがりたくなったのかもしれない…。
仮にY君も知らなかったとしたら、
果たして語り手はどうやってこの同窓会を知ったのだろうか?
それにしても、同窓会に呼ばれず、
覚えられていない…
非常に悲しい物語でした。