私には昔から、
他人に見えないものが見えるらしい。
それを初めて見たのは記憶も曖昧なほど幼い頃だった。
外出先で黒い影と共に歩く人間を見かけた。
始めはそういうものなのだと思っていたが、
何度も影を連れた人間を見ていると、
その影の正体を知りたくなり、
両親にあれ何?と尋ねた。
すると両親は何が?と返してきた。
そして悟った。
あの影は私にしか見えていないのだと。
ある日父が出張に行った。
その後私と父は二度と顔をあわせることは無かった。
出張の日の朝、父が影を連れて家を出たのを思い出した。
あぁ、そういうことだったんだ。
今私は飛行機に乗っている。
「今日の飛行機、小さい割には乗客がずいぶんと多いのね」
【解説】
影が出る=死ぬ
飛行機に乗客が多く感じているのは
影が多く見えているため。
つまり、この飛行機は墜落してしまい、
乗客が死んでしまうということだろう。
語り手は随分落ち着いているけれど、
影がたくさんの飛行機とか
それだけで恐ろしくないだろうか?
小さい頃から何度も影が見えているから、
特に気にしなかったのだろうか…?