私は中学の頃、
クラスの全員からいじめを受けていて、
私の心は崩壊寸前でした。
そんなある日、
突然同じクラスのある女の子が声をかけてくれて、
一気に仲良くなりました。
彼女は私の唯一の友達となり、
どんなに辛いことがあっても
彼女に全部を話すことで気が楽になりました。
彼女も私の相談を受けているときは一番真剣で、
生き生きとしていました。
本当に素敵な友達が出来たと思いました。
彼女と仲良くするようになった頃から、
いじめは減っていきました。
ちょうどその頃、
クラスのある男の子が行方不明になりました。
私をいじめていた主犯格の男の子でした。
しばらくすると主犯格の一人がまた行方不明になりました。
クラスの人は気味悪がって私をいじめなくなりました。
私はほっとした反面、複雑な気分でした。
それからでしょうか、
彼女が私に対して冷たく接するようになったのは。
それが悲しくて、彼女と何とか仲直りしたくて、
一緒に帰ろうと思い
授業が全て終わると彼女の方をちらりと見ました。
彼女は私の視線にも気付かず
さっさと教室を出ていきました。
私が急いで彼女を追いかけると、
彼女が校舎の裏に向かっていくのが見えました。
不思議に思いながらも追いかけると、
彼女の足元に主犯格の一人が
赤い色の服を着てうつ伏せで寝ていました。
私がびっくりして持っていた鞄を落とすと、
彼女はこちらを振り返り
赤くなった顔でニコッとしました。
｢あなたが…やってたの……？私の為に………？｣
そうか、彼女は私の為に自らが犠牲になってまで…！
あぁ何て素敵な友達を持ったのだろう。
方法こそ間違ってしまったけれど
彼女は私の本当の親友だ。
そう思うと涙が溢れてきました。
「私の為にこんな………」
彼女は笑って言いました。
「何を勘違いしているの？私が見たいのはそれじゃないわ」
【解説】
語り手は
クラス全員からいじめを受けていた。
つまり、『彼女』も加害者の一人だった。
『彼女』は語り手の相談を受けているときが
一番真剣で、生き生きとしていた。
それは、語り手が苦しんでいる姿を見ることが
『彼女』の楽しみだったから。
『彼女』が語り手に近づいたのは、
苦しんでいる姿を間近で見たかったから。
しかし、いじめは減ってしまい、
『彼女』は不満を持ってしまった。
そこで、
「主犯格を殺せば、語り手が疑われ、
もっといじめられるのではないか？」
「もっと苦しむのではないか？」
と考え、『彼女』は行動に移した。
しかし、語り手へのいじめはさらに減り、
『彼女』はつまらなくなって、
語り手に冷たい態度をとり始めた。
『彼女』が見たかったのは
語り手の笑顔や感謝ではなく、
いじめられて苦しむ語り手の姿。
果たして、語り手はこのあと
何をされてしまうのだろうか…？
