旅行先で、現地の女の子と仲良くなった。
次の日には、彼女の家にも招待された。
その時、ぼくは、
ダイニングの綺麗な飾り棚に、
彼女の顔写真が置かれているのを見つけた。
ぼくは、今回の思い出に、
その写真を貰えないか、と訊ねた。
すると、彼女は寂しそうに笑って、
「この写真だけはダメなの」と答えた。
【解説】
『この写真だけはダメなの』
ダイニングに置かれた彼女の写真は
「遺影」だったため、
その写真だけはダメだと言われた。
つまり彼女はすでに死んでいて、
幽霊に家に招かれたことになる。
…この後悪霊になり語り手は…
なんてことになり得るのだろうか?
ただ、この現地の女の子。
特に語り手と縁があるわけでもない。
幽霊は縁があるないは関係ないが、
語り手と関わって家にも招いているため
なんとなくこの女の子は生きているように感じてしまう。
でも、「遺影」があるとしたら…
両親にだけ女の子の存在が見えず
死んでいるような扱いを受けているのでは?
なんて思ってしまった…
「私は目の前にいるのに、どうして私を見ずに
その写真だけを見るの!?」
という悲痛な思いを…
でも、そんな思いも諦めに変わって、
今は両親は「遺影」が心の拠り所になっているから、
その写真は渡せないと…
なんかそんな感じの話があったような気がするなぁと
ふと思ってしまった。
生きているのに死んでいる扱いを受けて
両親と会話ができなくなったら悲しいなぁ…
自分が死んでいると錯覚しそうである。