僕は運転手。
とある列車の運転手。
様々な人の思いを乗せて、
今日も列車は走ります。
途中下車はできません。
乗ったからには必ず終点まで行ってもらわなければ。
そうしないと、
僕が上の者に怒られてしまうのです。
また、乗客の方々のためにも、
途中下車や乗車拒否はおすすめできません。
もしそんなことをしようものなら、
間違いなくその人は行き場を見失うでしょうから。
まあ、そんなことはこの僕がさせませんけどね。
出発駅に来てしまったのなら、
この列車に乗って終点まで行くのがルールです。
もしルールを破ろうとしたら、
多少手荒な方法を使ってでも無理やり列車に乗せますから。
僕の列車には、
毎日たくさんの人が乗り込みます。
老若男女、様々に。
ガリガリに痩せている者や、
やたらと着衣の乱れている者、
果ては服にべっとりと血を着けている者まで。
…まあ最後に言ったような人は滅多にいませんけど。
そんなたくさんの人々を、
今日も僕は運びます。
終着駅へと運びます。
終着駅には皆行くけれど、
戻る者はありません。
往復切符は残念ながら取り扱っていないので、
悪しからず。
この列車には、誰もが一度乗るでしょう。
そして一度きりしか乗らないでしょう。
何せこの列車は行きっぱなしなのですから。
往復出来るのは、運転手である僕だけです。
おや、そろそろ出発の時刻のようですね。
それでは僕の語りもここら辺で終わりにしましょうか。
定時ピッタリに運行するのが僕のモットーですので。
賢明な読者様なら、
もうお分かりでしょう?
この列車の終着駅はどこなのか。
若いうちにこの列車に乗らないで済むように、
くれぐれも注意してください…ね?
それでは皆さん、またいつか。
一一一僕は運転手。
とある列車の運転手。
今日も定時ピッタリに、
皆を終点へと運びます。
悲しみ、喜び、寂しさ、狂気…
様々な思いを乗せながら、今日も列車は走ります。
【解説】
この列車は『葬送列車』。
若いうちに乗りたくないなぁ…