金のランプを拾った。
子供の頃に見た事がある。
魔法のランプ。
しかし、目の前で妖しげに光るそれは
絵本の中の空想などでは無く現実だ。
ゴクリ、と息を呑んでランプを擦る。
果たして――
視界を覆うほどの煙と共に現れたのは、
絵本に描かれていた魔人そのものだった。
「え~、私を呼んだのは其方か?
あ~では、その礼として願い事を3つ叶えてやろう。
ほら、早くしてくれ」
随分と態度の悪い魔人だ。
でも、そんな事は些細な事だ。
やる気無くこちらを見下ろす魔人に俺は言ってやった。
「いや、願い事は1つで良い」
途端に魔人の態度が一変した。
「何!?1つで良いのか!?」
「ああ、それで充分だ」
よっぽど嬉しかったのか、
声も弾んでいる。
「よし、では其方の願いを申してみよ」
「俺の願いは――」
俺の願いは達せられた。
なんと愚かだったのだろう。
しかし、どれだけ後悔しても後の祭。
俺は暗闇で1人、嘆いた。
【解説】
語り手は3つの願いだけでは足りないと考えた。
そのため、
「願いをいくつでも叶えられるようにしてくれ」
と願った。
その結果、
語り手はランプの魔人になってしまい、
ランプに閉じ込められた。
魔人は
願い事は1つで良いと言われてから
嬉しそうにしている。
これはつまり、
語り手が望むことを察していたからだろう。
そして、きっと
この魔人も昔は人間で、
同じように願った結果、
魔人になってしまったのだろう。
「ようやく解放される…」
その安堵の気持ちから
嬉しそうにしているのだろう。
魔人も語り手も
欲深い人間だった。
語り手は次に同じように欲深い人間に出会うまで
ずっとランプの中で過ごすことになる。
もし願い事を3つ叶えられるとしたら
何を叶えてもらうだろうか?
3つもあれば十分な気もする…