ある骨董店で『願いの叶う壺』を手に入れた。
店主の話では、
それを持ってきた男には足がなかったそうだ。
その男はいくらでもいいからと
手っ取り早く金に換えていったと言う。
男いわく
『それは本物なんだ、これが証拠だ』
と無くなった足を指差したと言うことだ。
金が欲しいと願ったら叶えられた。
しかし代償も少なくなかったとまくしたてられたらしい。
私も妻がいるが、生活が苦しい。
この壺に願をかけてみよう。
三日後、私の手元には慰謝料と保険金が残された
【解説】
『しかし代償も少なくなかったとまくしたてられたらしい』
語り手はその代償が足だったということを理解しているはずだが、
語り手はこの壺に願いをかけた。
そのくらい生活が苦しかったのだろうし、
『私も妻がいるが』
と言っているくらいなので、
自分はどうなってもいいから妻に楽をさせたい
という気持ちがあったのかもしれない。
しかし、
『三日後、私の手元には慰謝料と保険金が残された』
この文章にはなんだか寂し気な雰囲気を感じる。
喜んでいるようには見えない。
となると、おそらく
代償となったのは彼の足や体の一部ではなく、
妻が代償となったのだろう。
体の一部を失ったのか亡くなったのかはわからないが…
語り手からすると妻のためにお金を得ようとしたにも関わらず、
その妻が亡くなってしまい、
呆然とするしかない。
一生後悔が付き纏いそうである。