僕の高校には、ある噂がある。
北校舎の東西二ヶ所、
南校舎の東に一ヶ所、
計三ヵ所に一階から四階までの階段がある。
それぞれ10段昇って踊り場で折り返し、
また10段昇る……という階段だ。
噂というのは、下校時刻を過ぎた後に、
どこか一ヶ所だけ階段の段数が増えるという。
聞いたところによると、
段数が増える階段は毎晩違うらしい。
もしその階段を昇ってしまった場合、
13段目を踏まないように昇り切らなければ
神隠しに遭うとの噂だ。
その噂の真偽を確かめるべく、
僕は今、夜の学校に忍び入っている。
もちろんの事だが、
自主的に調べに来たわけではない。
友達五、六人でのトランプの罰ゲームで
やらされることになったのだ。
こう言うと無理矢理押し付けられたように聞こえるけど、
言い出しっぺは僕なんだよね。
自分で言っておいて放り出すのも格好悪いし、
こうして嫌々ながらやってきたわけだ。
日中の内に開けておいた南校舎の窓から、
校舎に侵入した。
南校舎は美術室やら音楽室やらの特別教室だけの校舎で、
生徒や教師の往来が少ないせいか、割と管理がずさんだ。
まずは南校舎の階段から調べていこう。
段数が増えるのは昇っている時だけという話だから、
四階まで昇ったらそのまま降りてこないといけないな。
誤って13段目を踏まないよう、
しっかり段数を唱えながら昇っていこう。
1、2、3、4、5……10。
踊り場までは普段通り10段だな。
次は二階まで。
1、2、3……
南校舎と北校舎の東階段を昇り終えたが、
階段には特に異常はなかった。
ただ、校舎内に何かの気配を感じる気が……
気のせいかな。
さて、後はこの北校舎西階段だけだ。
まぁここも何の変哲もないだろう。
月も高くなったし、
さっさと済ませて帰ろう。
1、2、3、4、5……10、11……？
ここだ……段数が多い……
昇ってしまった以上、
降りることはできないな……
……一階の廊下の奥から
ヒタヒタという足音が聞こえてきた……
甲高いクスクスという笑い声も一緒に……
やばい、早く昇らなきゃ。
とにかく13段目を踏まないようにしないと……
えっと……13段目は……
あぁ……昇る前に段数を数えるべきだった……
【解説】
踊り場がちょうど13段目になっているため、
踏まずに昇り切ることはできない。
昇ってしまった以上降りることもできないし、
助かる方法としては動かずに夜明けを待つしかない。
しかし、何者かが近づいてきている。
はたして語り手はどんな行動に出るのだろうか…？
踊り場を踏まずに
手すりを使ってアクロバティックな動きをして
上の階段に着地すればなんとか回避できないだろうか？
まぁ、自分がやったら
下に真っ逆さまに落ちそうである。
