助けて
助けて
殺される
僕は起きた。
またこの夢だ。
もう何度目だろう。
毎日夢の中で追い掛けられる。
何が追い掛けて来るのか分からない。
けど、僕を殺そうとしているのだけは分かる。
また、今日も見るんだろうな。
僕はいつも通り仕事に行き、
いつも通りに帰り、いつもの時間に寝た。
僕は、趣味もない。
友達もいない。
別にそれでいいと思っている。
あぁ、また追い掛けられている。
助けて
助けて
遂に捕まった。
そして、僕は殺された。
目が覚めた。
なぜだろう。
汗をかいていない。
むしろ気持ちがいい。
さぁ仕事に行こう。
今日は同僚と飲みに行った。
明日は合コンだ。
彼女が欲しいな。
【解説】
前半と後半の語り手の性格が異なっている。
前半は消極的、後半は積極的。
性格が異なっているだけで、
どちらも同じ語り手。
夢の中で正反対の語り手が
現実の語り手を殺そうとしていた。
つまり、現実の語り手の性格を殺して、
夢の中にいる語り手が身体を支配しようとしていた。
そして、ついに夢の中で
現実の語り手を殺すことができ、
夢の中でしか生きることができなかった語り手が
現実の身体も支配した。
もしかしたら、
「現実の語り手」があまり好きでなく、
夢の中で現実の語り手の性格を殺すことで
「新たな自分になれるかもしれない」
と無意識に思っていたのかもしれない。
そして、夢の中で語り手の性格を殺すことができ、
新しい語り手としてスタートすることができた、
というのであれば、別人格ではなく、
あくまでも思い込みによるもの。
性格は思い込みの部分が強いだろうし、
「夢の中で自分を殺すことで性格を変える」
なんてことがあってもおかしくないかもしれない。