妻は優しくて、
よく気の利く女性である。
私は2ヶ月程前から入院しているが、
まさに痒いところに手が届く、
そんな看病をしてくれる。
私はそんな妻の心遣いに頭が下がるばかりだった。
私「すまんな。面倒ばかりかけて…」
妻「何言ってるんですか、あなた。夫婦でしょ」
この女性と結婚して良かった。
涙が出そうになる。
そんなある日のこと。
妻は看護師に、頼みに頼んで、
許しを貰うと家具屋へ畳ベッドを注文し、
病院の味気ないベッドと取り替えてくれた。
井草の匂いがする。
「やはり畳は良い…」
そこで思い出す。
以前私は妻にこう言った覚えがある。
「死ぬときは、畳の上で死にたいな」
【解説】
もうすぐ語り手は死んでしまうため、
畳ベッドへと取り替えられた。
もしかしたら、語り手は余命を知っておらず、
ここで初めてもうすぐ死ぬことを悟ったかもしれない。
それはそれで辛いことだろうが、
この語り手であれば
妻の心遣いだと思えばすんなり受け入れられるだろう。