【意味怖】意味がわかると怖い話まとめ

【意味怖】意味がわかると怖い話を読んで頭の体操を!捉え方は人それぞれであり、答えは一つであるとは言えません。解説も答えではなく、一つの捉え方。あなたがどう捉えたかを教えていただけると幸いです。


【意味怖】七月三日

スポンサーリンク

ジリリリリリリ。

 

目覚まし時計が激しく鼓膜を揺らす。

 

僕はうんざりしつつも、
目覚まし時計を止めて布団から出た。

 

昨夜、
大学の友人達と遅くまで飲んでいたせいか
頭が酷く痛い。

 

ぼんやりと立ち上がって携帯を開く。

 

七月三日。

 

普段通りの待受画面と共に、
今日の日付が表示された。

 

「朝は一杯の水から始めましょう」

 

誰に言うでもなく水道水をコップに汲み、飲む。

 

うん、カルキ味。

 

テレビを点けて、
朝食の準備に取りかかる。

 

フライパンを熱していると
テレビのニュースキャスターが
今朝の事件のニュースを読み上げ始めた。

 

『今日未明、
◯◯市の路上で惨殺遺体が発見されました。
被害者は市内の会社員の男性…』

 

「杉本静」

 

意味もなくそう呟いた。

 

『杉本静さん。30才で』

 

冷蔵庫から取り出した卵を落としてしまった。

 

僕はただ呆然とテレビ画面を見つめていた。

 

どうして。

 

どうして僕は被害者の名前がわかったのだろうか。

 

気味の悪さで肩が震える。

 

偶然だろう。

 

無理矢理そう決めて、
床の卵を片付けた。

 

朝食を済ませると11時だった。

 

だが、いまだに先ほどの気持ち悪さは残っている。

 

気分を変えようと外出することにした。

 

部屋を出て最寄り駅へ向かう。

 

久々に服でも買いに行くつもりだ。

 

最寄り駅のホームには
僕の他に老婆一人しか居なかった。

 

黒い服に身を包んでいる。

 

葬式でもあるのだろうか。

 

そんな事を考えているうちに、
電車が到着した。

 

僕と老婆は同じ車両に乗り込む。

 

特にすることもなかったので、
進む車窓を眺めていた。

 

不意に、
老婆が次で降りるな、
と感じた。

 

やはり彼女は、
その駅で電車を降りた。

 

後には、
冷や汗をかいた僕だけが残された。

 

目的地の駅に到着すると、
僕はすぐさま改札を抜けた。

 

少し恐怖を感じていたので、
早く電車から離れたかったのだ。

 

駅周辺はやはり休日ということもあってか、
人で賑わっていた。

 

ふと、前の女性の鞄から携帯電話が落ちるのが見えた。

 

どうやったら落ちるん、と、
辟易しながら彼女に声をかける。

 

「あの、携帯落としましたよ」

 

「え?あっ!!うわー、よかった。ありがとうございますっ!!」

 

「あ、いえいえ」

 

「本当助かりました」

 

「あー、いえいえ」

 

なんてとりとめのない会話が続いた。

 

初対面の人との会話だから仕方ない。

 

でも、どうしてだろうか。

 

彼女とは初めて会った気がしない。

 

「あのー、失礼ながら僕たち初対面ですよね」

 

思わず聞いてしまっていた。

 

彼女はビックリしたように目を大きくして、
それから吹き出した。

 

「ぷっ!!えーと、ナンパ?ですか?
こんなアプローチ初めてですよ…ふふふ」

 

「あー、えーと、
ナンパとかじゃなくてですね…」

 

「いいですよ。
貴方おもしろいから、どこか行きましょうか」

 

「は?」

 

どうしてだろうか。

 

何故か、
したつもりもないナンパが成功してしまった。

 

「カフェでも行きましょうか」

 

隣の彼女が言った。

 

僕は小さく

「うん」

と肯定した。

 

しかし見れば見るほど見覚えがある。

 

彼女に付いていったカフェでコーヒーを飲みながらそう思う。

 

彼女はカフェオレを飲んでいる。

 

「本当に見覚えない?」

 

「うー?うー…いや、わかんないです」

 

クスクス笑いながら彼女は答えた。

 

まだ僕が運命信仰家である事を疑っているみたいだ。

 

カフェを出ると、
僕らは映画館へ向かった。

 

最近話題の映画を観るためだ。

 

「まさか、
見知らぬ人と映画館来るなんて思わなかったですよ。
今日の朝」

 

「僕も」

 

二人してぎこちなくチケットを買って、
上映室の真ん中辺りの席へ座る。

 

内容は人気サスペンスドラマの映画版だけあって、
かなり質の良いものだった。

 

しかし、途中で、
またラストシーンがわかってしまった。

 

しかもそれがまたもや正解したのだ。

 

僕はただ、溜め息を吐いていた。

 

「予想外なラストシーンでしたねー」

 

映画館から出ると、
彼女は興奮したように僕に熱弁してきた。

 

時間は既に6時を回っていた。

 

「夕食も食べる?」

 

「折角ですしね」

 

と、駅前のファミリーレストランへ向かった。

 

「良かった?ファミレスで?」

 

「はい。
私、ファミレスのハンバーグ好きなんです。
あの安っぽい味が」

 

「あー、わかる気がする」

 

「じゃあ、ハンバーグ頼むの?」

 

「いいえ、たらこスパゲッティを」

 

「ハンバーグじゃないんだ」

 

なんて会話を楽しんで、
僕達はファミレスを出た。

 

「家行っていいですか?」

 

突然の提案に、転倒した。

 

驚きすぎた。

 

「えーと、私かなり貴方を気に入っちゃいました。
好きかもしれません」

 

さらに突然の告白をされた。

 

ただ僕は

「うん」

と肯定しただけだった。

 

「汚い部屋ですが」

 

僕は彼女を自分の部屋へ招いた。

 

「おー、リ◯ックマ」

 

僕のリラッ◯マクッションを抱きながら
彼女は部屋をごろごろし始めた。

 

その姿が可愛すぎて、
思わず抱き締めていた。

 

「あー、僕も君が気に入ったみたいだね…
多分、好きだ」

 

「きゅー」

 

鳴きながら彼女がキスをしてきた。

 

お返す。

 

「今更ですが、私のお名前は笹原抄子です」

 

あー、やっぱり聞き覚えあるわ。

 

「今更ですが、僕のお名前は榎夏野です」

 

「あれ?榎夏野?聞き覚えあります」

 

「え?本当?」

 

「まあ、もうどうでもいいじゃないですか」

 

「それもそうかー」

 

電気を消してベッドへ入り、
僕達は眠った。

 

こんな出逢いも、
たしかにアリだよなー。

 


ジリリリリリリ。

 

目覚まし時計が激しく鼓膜を揺らす。

 

僕はうんざりしつつも、
目覚まし時計を止めて布団から出た。

 

昨夜、大学の友人達と遅くまで飲んでいたせいか頭が酷く痛い。

 

ぼんやりと立ち上がって携帯を開く。

 

七月三日。

 

今日も今日が始まる。

 

 

【解説】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七月三日がループしている。

 

ただし、ループしている意識はないようだ。

 

いずれループしていることに気づくのだろうか?

 

 

ただ、ループしていることに気づかないのであれば、

ただの変わった一日として認識するだけだから

そこまで意識することもなく、また改善しようと思うことなく、

永遠に七月三日をループしているんだろうなぁ…。

 

認識していないのであれば、

それはそれで幸せなのかもしれない。