【意味怖】意味がわかると怖い話まとめ

【意味怖】意味がわかると怖い話を読んで頭の体操を!捉え方は人それぞれであり、答えは一つであるとは言えません。解説も答えではなく、一つの捉え方。あなたがどう捉えたかを教えていただけると幸いです。


【意味怖】焼け落ちた山村で

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布団から飛び起き、
慌てて腕時計を確認する。

 

時計の針は10時20分を指していた。

 

ホッと胸を撫で下ろし、
洗面所へと向かう。

 

身支度を整えて、
宿のチェックアウトを済ませ、
レンタカーで目的地へと走らせる。

 

なぜ僕がこんな場所にいるのか、
まずはそこから話そう。

 


僕はある有名週刊誌の記者をやっている。

 

うちの編集長が何を思ったのか、
この真冬に心霊スポット特集をやろう、
と言い出した。

 

そういった類いが苦手ではなかった僕は、
その企画に乗っかった。

 

概要としては、
数人の記者がそれぞれ心霊スポットに赴き、
撮影や取材をしてくる、という簡単なものだ。

 

僕が訪れることになったのは、
数年前に大きな山火事に遭い、
住民が皆亡くなったという山奥の山村である。

 

その村には若者がおらず、
そのために火事を止めることも逃げることもできなかった、
という話だ。

 

ネット上の噂だと、
その山村に日が落ちてから入った者は
二度と帰ってこれないとか。

 

事実、この村に肝試しに行くと告げて
行方不明になった若者が数多くいる。

 

よくある話だ。

 

幽霊に出会った、という噂は流れていなかったし、
昼間に訪れれば楽な取材になりそうだ。

 

しかし、昨日は飲み過ぎてしまったな。

 

心霊スポットを取材しに行く仲間たちと、
景気付けと称して朝方まで飲み明かし、
その後タクシーで山村近辺の宿に泊まったんだっけか。

 

少しばかり頭痛がするが、支障はないだろう。

 


日の光がほとんど届かない鬱蒼とした林道を長い間走り続け、
ようやく開けた山道に出られた。

 

日はまだ高い位置にある。

 

少しして、数件の民家が見えてきた。

 

速度を緩めながら、
その様子を見て不思議に思った。

 

確か村は全焼して酷い有様だと聞いていた。

 

それなのに、平然と民家が立ち並び、
焼け跡すら見受けられないのである。

 

村に入ってからも火事があった痕跡は見当たらない。

 

山火事があったというのは、
デマだったのだろうか。

 

しばらく進んでいると、
軒先に老婆が座っているのが見えた。

 

なんだ、人がいるじゃないか。

 

ちょうど喉が渇いたし、
取材ついでに水でも貰えないかな。

 

家の玄関前に車を止め、
その老婆に歩み寄った。

 

「すいません、ちょっとお伺いしてもよろしいでしょうか」

 

「はいはい、なんですか?」

 

老婆は笑顔で答えてくれた。

 

ずいぶん親切そうだ。

 

「この村は数年前に大きな火事に遭ったんですよね?」

 

少し顔を伏せ、
先より弱い声で返事が返ってきた。

 

「あん時は酷くてなぁ。
熱うて熱うて、みんな水を求めて彷徨いよった」

 

そう言って口をつぐんでしまった。

 

触れるべき内容じゃなかったか。

 

ここは話題を変えよう。

 

「あの、喉が渇いたので水を貰ってもいいでしょうか?」

 

「ああ、いいよ。裏に井戸があるけぇ、そこから汲んでください」

 

軽くお辞儀し、
老婆の指した方へと歩くと、
古い井戸が見えた。

 

だが、困ったことに桶が見当たらない。

 

井戸に落ちてるのだろうか。

 

何の気なしに井戸の中を覗き込む。

 

「うっ」

 

思わず井戸から離れ、鼻を塞いだ。

 

中には水などなく、
白骨死体と腐った若者の亡骸があるだけだった。

 

慌てて軒先に戻ると、先の老婆がいない。

 

これは一体どういうことだ。

 

日は出てるし、まだ夜じゃないはずだ。

 

狐にでも化かされてるのか。

 

何より、日差しが異常だ。

 

冬だというのに焼けるように暑い。

 

これ以上の長居は体力的にも危険だ。

 

一度帰ろう。

 

日光で熱くなった車内に入り、キーを回す。

 

動かない。

 

ない。

 

満タンに入れてきたはずのガソリンが。

 

暑さのせいか、恐怖からか、汗が顔を伝う。

 

その汗が、腕時計に落ちる。

 


時計の針は10時20分を指していた。

 

 

【解説】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時計は止まっており、

実はもっと遅い時間に起きていた。

 

そして、林道を走っている内に

実は日が落ちていた。

 

『日は出てるし、まだ夜じゃないはずだ』

『何より、日差しが異常だ』

と言っているが、

実は日の光ではなく、

火によるものだった。

 

そのため、車内も熱くなっており

『暑さのせいか、恐怖からか、汗が顔を伝う』

という状態になっている。

 

行方不明者も同じ状況に遭い、

水を求めた結果井戸に落ちた。

 

井戸の異臭は

干からびて息絶えた遺体だろう。