僕の弟は罪を犯しました。
強盗殺人罪です。
盗みに入った家で物色中に主の老婆が帰宅し、
慌てた弟は主を殺害してしまいました。
弟の犯した罪は重いです。
しかし、どうか僕の話も少し聞いてください。
弟は、根はイイヤツなんです。
我が家は昔から貧しかったので、
小さい頃おやつはいつも半分こでした。
しかし弟はいつも笑顔で
僕に多い方を譲ってくれるようなヤツでした。
家族思いの弟です。
今回も盗みに入った理由というのも、
実は僕の借金返済のためなんです。
僕の借金があまりにも多額なため
弟が何とかしてくれようと
思いついた苦肉の策だったのです。
どうか信じてほしいのですが、
今回の強盗殺人は決して計画的犯行ではないんです。
ましてや、主を殺す気なんて
弟にはまったくなかったと思います。
その証拠というのも変ですが、
弟は凶器なんて持って行ってません。
殺害方法は家にたまたまあった壺で撲殺です。
もうひとつ弁護させてもらうと
老婆が息子のように大事に飼っていた猫をそのまま放置できず
連れて帰ってきたりして
優しい心は残ってます。
犯行時は気が動転していたみたいだけど
家に帰ってきて冷静になったら
とてもとても後悔していました。
家に帰ってから数時間後、罪悪感に苛まれて
口がきけぬよう自らの咽を潰し、
歩けぬようアキレス腱を切り、
二度と物を持てぬよう手をコンロで炙りました。
親族のみなさま、
弟は深く反省しております。
許してくれとはいいません、
しかし罪を少しでも軽くしてやってくれないでしょうか？
【解説】
『口がきけぬよう自らの咽を潰し、
歩けぬようアキレス腱を切り、
二度と物を持てぬよう手をコンロで炙りました』
ここまで詳しくやったことを知っているのに止めてもいない。
これは極悪非道な兄の話。
兄が強盗殺人を行い、
その罪を弟になすりつけた。
咽や手足への行為は
すべて兄が弟の口封じのためにしたこと。
『親族のみなさま』
と言っていることから証言を行っているのだろうけど、
この証言を聞いてどう思っているのか気になってしまう。
