『ジリリリリリリ…』
やけにうるさい目覚ましの音で目が覚めた。
時計の針が指すのは…
午後…12時!?
しまった。今日は大事な会議だったのに…
とりあえず部長に電話しないと…と、携帯を手に取ると
『~♪』
携帯が鳴った。これは…部長からだ!!
急いで電話に出ると、部長が一言。
『今日は本当にご苦労だった!
君のお陰で売り上げが伸びそうだ!
そうだ、飯でも食いに行かんか!?』
…?俺は確かに遅刻したはずだ。
不信に思ったがピンチを免れた俺は、
「いいですね!行きましょう!」
と、話を合わせた。
6時くらいに行くらしい。
それまでテレビを眺めていた。
何かの特集だろうか?番組の題は、
『もう一人の自分!?本当にいたドッペルゲンガー!!』
となっていた。
「胡散臭いな…」
元々、こんな話は興味が無いので、
チャンネルを変える。
…いつもの俺ならそうしていたが、
今日は不思議と見る気になっていた。
『ドッペルゲンガーとは、
自分の分身のようなモノで…』
などと専門家が熱く語っている中で、
妙に耳に残っていた言葉があった。
『ドッペルゲンガーに会うと…
本体か向こうか、どちらかがこの世から消えてしまうんですよ』
やっぱり胡散臭いな。
そう思い、チャンネルを変える。
そんなこんなでもう5時だ。
そろそろ行こう…
『―速報です。
〇〇県の交差点で、
〇〇さんとみられる遺体が発見されました』
俺は目を見開いた…部長だ…。
『~♪』
追うようにして、電話が掛かった。
『〇〇(俺の名前)か?早く来い!!
もう6時になるぞ…お、何だもういたのか!
おい!こっちだ〇〇!!』
それは紛れも無く…
部長の声だった。
【解説】
会議に出ていたのは
語り手のドッペルゲンガー。
部長は語り手のドッペルゲンガーがいない間に
語り手に電話をかけた。
そして、部長は待ち合わせ場所に向かう途中、
自分のドッペルゲンガーに会ってしまい、事故死。
部長とドッペルゲンガー、
どちらが死んでしまったのかはわからないが、
生きている部長が語り手のドッペルゲンガーと会った。
なので、語り手がこれから向かうと
語り手のドッペルゲンガーと鉢合わせしてしまうため
どちらかが死んでしまう。
もうすでにドッペルゲンガーが行っているわけだし、
行く必要もないのだが、
語り手はこれから一体どうするのだろうか?
それにしても、
テレビでは部長が死んだことになっているけれども、
生き残った部長がこれからどのようにして生活していくのかが気になる。