ある大金持ちの老人が死んだ。
死ぬ少し前はもう孤独なもんだったらしい。
若い頃は好色で有名でも老いると悲しいもんだな。
後に残された莫大な遺産。
遺言状もなく、
政府に寄付されるところだった。
ところがある時
急に一人の若い男が遺言状を持って現れた。
彼が持っていた遺言状を調べてみたところ、
確かに死んだ老人の字だということがわかった。
死の直前に書いたのか、
字は震えているしところどころ霞んでいる。
内容は簡素なもんで、
ただ全財産を遺言状を持っていた奴に譲るってことだけだった。
あやしがりながらも
彼のための手続きに老人の弁護士達は動き出した。
ある日俺が老人の墓参りに行くと、
丁度その男が先に来ていた。
墓に添えられた花は白い花。
確か……クチナシとか言ったっけな。
彼はクチナシを指差し
ニヤリと俺に笑いかけて立ち去った。
【解説】
『若い頃は好色で有名でも』
と老人は若い頃好色だった。
そして、男は老人が若い頃に生まれた息子だった。
男は老人を脅して遺言書を書かせ、
ばれないように工夫して殺した。
墓参りでクチナシを備えたのは
「死人に口なし」という意味が込められていた。
この男は生まれてからどういう生活をしていたのだろうか…?
老人はこの男のことを知っていたのだろうか?
そこらへんの物語の部分が少し気になってしまった。