~♪♪♪
携帯電話の着信音が鳴った。
昨日別れ話をした彼、佑樹からだ。
佑樹とは1年程付き合っていたが、
段々気持ちが離れてしまい、私から振った。
「何の用だろう…」
佑樹のメモリを消したり、
着信拒否したりするのを忘れていた。
あまり気が乗らなかったが、
数コール目で電話に出た。
「…加奈、最後にもう一度だけ会って話をさせてくれないか?
このままじゃお前の事諦められないから」
私はもう話すことはない、と断ろうとしたのだが、
彼がどうしてもと言うので、
これが最後という約束をして仕方なく会うことにした。
ストーカーとかになっても困るし…
佑樹はバイクで私の家まで迎えに来てくれるようだ。
それからどこかの店か何かに行くのだろう。
付き合ってる時はよくバイクの後ろに乗せてもらって、
色々な所に出掛けたなぁ…
なんて思い出しながら待っていると、佑樹が到着した。
「乗れよ」
ヘルメットを渡され、
私はバイクの後ろに乗る。
バイクが走り出した。
佑樹は前だけを見て、
無言で運転している。
…しばらく走っているが、
どこにも寄る気配がない。
次第に街から離れていく。
「ねぇどこに行くの?」
私は聞いてみたが佑樹は答えようとしない。
私は不安になった。
そのうち、
コンテナ置き場?倉庫?みたいな所に入って行き、
バイクのスピードが上がったのを感じた。
「恐い!」
私は恐くて佑樹にしがみつき、
体を小さくした。
すると突然、ドンッ!と衝撃を受け、
私は弾き飛ばされ、
バイクから振り落とされてしまった。
何が何だかわからない内に頭を打ち、意識を失う。
バイクが走り去る音が耳に聞こえていた…
…目が覚めると、そこは病院だった。
両親が涙を流して私の名前を呼んでいる。
「…?」
あぁそうか、私バイクから落ちて…助かったんだ…?
少しずつ思い出してきた。
佑樹は別れ話をした私に腹が立ち、
あそこでバイクから突き落とし置き去りにしたのだろうか。
「佑樹…は…?」
両親は佑樹の名前や付き合っていたことを知っているので、
聞いてみた。
すると、両親は口を押さえ暗い顔をして首を振った。
「佑樹くんは、加奈から数十メートル離れた所で…」
私はその時、意識を失う直前、
朦朧とする中で見たものを思い出した。
バイクで走り去る佑樹の、
首から上がなかったことを…
【解説】
佑樹は語り手と一緒に死のうとして、
バイクで通る場所にワイヤーを設置していた。
佑樹がスピードを上げたのは
ワイヤーで首を吹き飛ばすため。
しかし、語り手は恐怖で体を小さくしたため、
ワイヤーがヘルメットに当たるだけで済み
弾き飛ばされ、バイクから落ちた。
意識を失う前に見た走り去る佑樹は首が飛んだ状態の姿。
数十メートル先でバランスを崩して点灯し、
語り手を発見と同時に佑樹の首が飛んだ状態の死体も発見した。
一緒に死ぬ方法なんて色々とあっただろうに、
バイクとワイヤーを用いて死のうとするなんて、
語り手とバイクとの思い出が強かったのだろうか…