あるところに貧乏なブタの一家がいました。
母ブタは三匹の子供たちに
「これを使って、自分の家をたてなさい」
と、藁・薪・石からそれぞれに選ばせました。
そして、おにーさんブタは藁を、
まんなかのおにーさんブタは薪をえらび、
末っ子ブタは余った石を手に取りました。
それぞれ一生懸命に家を建てしばらく暮らしていると、
藁の家に一匹のオオカミがやってきて思いっきり息を吸い込んだかと思うと、
たったの一息で藁の家を吹き飛ばしてしまいました!
慌てたおにーさんブタは真ん中の弟が作った薪の家に逃げ込みました。
後をつけたオオカミは、
薪でできた家をグルリと一回りすると、
どこかへ行ってしまいました。
「はぁ~危なかった!この家には入れないと諦めたんだ!」
真ん中の弟は言いました。
おにーさんブタも言います。
「本当に助かった、ありがとう。
。。。ところでなんだか焦げ臭くないかい?」
その頃、
真ん中のおにーさんブタの家に遊びに来た末っ子ブタは、
おにーさんの薪の家を見て驚きました。
おにーさんの家は、
もう手が付けられない程に燃えていたのです。
そして近くにいた、
燃える家を眺めるオオカミと目が合ってしまいました。
末っ子ブタは大慌てで
自分の作った石の家に帰りました。
後日、
しょんぼりしながら母親ブタの元へ帰り、
兄たちの事を報告しました。
すると、母親ブタは
「あぁ、アナタはなんて可哀想な子なんでしょう」
と、末っ子ブタを抱きしめて言いました。
「違うよ、お母さん。僕は助かったじゃないか」
「いいえ、やっぱりアナタが一番可哀想。
おにーさんたちは死んでしまっても
私の元に帰ってこれるんですから」
末っ子ブタはワケがわからなかったが、
母親ブタに抱きついた。
【解説】
母親は子どもたちに家を建てさせることで、
誰が一番賢いかを確かめた。
その理由は、
賢い子の方が高く売れるから。
冒頭で
『貧乏なブタの一家がいました』
とあるように、
貧乏ながらもお金を得るために子供を売ろうとしていた。
おにーさん達は死んだ場所がわかっているから骨を拾うことはできるけど、
生き残った末っ子ブタは売ってしまうため、
二度と会うことはできない。
そのため、末っ子ブタは母親ブタの元に帰ってくることはできない。
二人の息子が死んでしまっても動じた気配がないのも、
末っ子だけになったのに売ろうとしているのも恐ろしいのだが…。