オオカミは家の前の草むらから、
家の中の会話を盗み聞いていた。
母親がカゴにぶどう酒と果物を入れながら、
赤ずきんに言う。
「これから…………に行ってきておくれ。
………におばーさんを……」
そして今度は玄関から出てきた赤ずきんが、
「それじゃ、おばーさまの所へ行ってきますね」
と母親にウインクし、
母親も応えるようにウインクした。
その時一瞬母親がオオカミの方を見た気がして、
オオカミは焦った。
(やべっ。見つかる前におばーさんの家に先回りしよう)
そしてオオカミは近道をしておばーさんの家に先回りした。
その頃おばーさんは、
食べきれないほどたくさんのご馳走を作って待っていた。
赤ずきんがおばーさんの家に着いたのは、
すっかり日が落ちてからだった。
赤ずきんは、
ゆっくりとおばーさんの家のドアを開けた。
「!!!!」
おばーさんのベッドに横になっていたのは、
なんとオオカミだった。
オオカミは膨らんだお腹をさすりながら、
眠っているようだった。
赤ずきんは一目散に逃げ帰った。
家に着くなり、
「おばーさまがオオカミに食べられていたわ!!」
と母親に伝えた。
そして二人は手をとって喜んだ。
「やっぱりね」
後日、母親と赤ずきんはオオカミに食い殺された。
【解説】
母親と赤ずきんは
おばーさんの殺害を企てていた。
ただ自分達の手を汚すわけにもいかないから、
本物の赤ずきんちゃんの物語のように
オオカミにおばーさんを食べてもらうことを考えた。
そのため。玄関でわざと聞こえるように
『それじゃ、おばーさまの所へ行ってきますね』
と言った。
しかし、オオカミはおばーさんに忠実だったため、
赤ずきん達の計画はおばーさんにすでに知られており、
おばーさんはそれを確かめるために罠をかけた。
それは、おばーさんが食べられたことにして、
二人の反応を見ようというもの。
『食べきれないほどたくさんのご馳走』は
オオカミがおばーさんを食べたように見せかけるためのもの。
そして、
『やっぱりね』
という言葉の通り、
おばーさんは赤ずきん達の企てを革新し、
自分を殺そうとした赤ずきん達をオオカミを使って殺した。
赤ずきん達も恐ろしいけど、
オオカミを手懐け、殺させたおばーさんが一番恐ろしい…。