私は新人の雑誌記者だ。
主に主婦層をターゲットにした雑誌の担当だ。
最近は、健康ブームや食育だのお取り寄せだのなんだので、
食べ物のことを載せるのがハズレがないらしい。
また、産地や栽培方法も明記している方がいいらしい。
そこで、初めての記事として、
私も好物の苺を特集することにした。
値段の割に、ジューシーで甘いと言われ、
現在人気急上昇中の苺農家に取材にいった。
試食させてもらうと、
確かに、ジューシーで甘い。
肥料を聞くと、企業秘密だと。
しかし、新鮮な肥料を毎日土に蒔いているとのこと。
他にも幾つか質問をし、その場を後にした。
帰る際、来た道と逆から帰ることにした。
すると、隣の建物からぞろぞろと人が出て来た。
一様に、黒い服を着て。
私は、記事にすることを辞めた。
そして、それから二度と苺を口にしなくなった。
【解説】
黒い服=喪服
死人や火葬した灰を肥料として使い
育てた苺だった。
そのことを知り、
語り手は苺を口にできなくなってしまった。
そんなことをしているのはこの農家だけだろうに…。
トラウマというのは恐ろしい。