20XX年、ついに若返りマシンが発明された。
わしはこのときを待っていた。
現在、87歳。
思えばろくでもない人生だった。
あのころに戻ってまた人生をやり直すのじゃ。
若返りマシンのある施設に行くとマシンが、
ズラリと数十台並んでおる。
係員いわく、
若返りたい年齢は自由に設定できる。
入ると設定した年の自分が
記憶はそのままで精製されるという。
年齢を20歳に設定して、いざ。
ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
わし(20なったらなにしようかな)
わし(早く若返らないかな)
わし(お、外から声が聞こえるぞ)
ガチャン
外の声(おー、ホントに若返ってる!)
係員(おめでとうございます、
第二の人生頑張ってください。
では手続きがありますのでこちらへ)
わし(お、隣の人は成功したのか。
わしも早く若返って出たいのう)
わし(まだかのう、もうちょっとかな)
外の声(では、いろいろありがとうございました)
係員(はい、ではもとのものは廃棄しておきますね)
【解説】
若返って出てきたのは、
若くなって精製された語り手のクローン。
語り手自体はそのまま廃棄、
つまり殺されてしまう。
若くなった身体に記憶だけ受け継がれても
自分自身が死んでしまうのでは意味がない…。