まだ昭和の時代の話である。
友人が落ち込んでいるのを見て、
小西くんは声をかけたのだという。
斉藤くんは普段は陽気な冗談ばかり言う子で、
高校のクラスでもムードメーカー的存在だった。
その彼が落ち込むなんて珍しい。
「30年後に巨大隕石が地球に衝突して、世界が終わるんだ」
重いため息とともに、斉藤くんはそう言った。
「なんで、そんなことがわかる?」
「俺には予知能力があるから」
小西くんがしばらくジッと見つめていると、
斉藤くんはいきなりゲラゲラと笑い出した。
「ちょっと、ビビッただろ、今?」
「そんなわけないだろ!」
背中をばしっと平手打ちしてやると、
「いてーな」と笑うその顔は、
いつものひょうきんな斉藤くんのものだった。
「でももし世界が終わるとしたら、小西はなにをする?」
「おまえはどうするんだよ?」
「わかんないなぁ。とりあえず、平成になってからの話だから、まだまだ時間あるしな」
【解説】
よくある予知能力のお話。
なぜ昭和の時代なのに
『平成』という元号を知っていた?
ということで、
斉藤くんは本当に予知能力を持っている。
昭和のいつかはわからないけれど、
昭和の時代で30年後となると
今平成28年なのでほぼほぼ過ぎていそうである。
「世界が終わる」的な話はよくあるが、
なんだかんだで何事もなく過ぎていく。
喜ばしいことではあるが、
予言などというのには心が踊らされてしまうため、
たまには当たってほしいと思ってしまうところもある。
世界が終わってしまっては困るので、
極力小規模のものを願うが…
そうなると、予言として大きく取り上げられないだろうから
難しいものである。