花売りの少女なんて、童話みたいだろ。
でもうちの近所に、路上で花を売ってる女の子がいるんだ。
まだ10歳くらいかな。
ランドセル背負って、
国道脇で切り花を売ってるのがけっこう可愛らしくてね。
あの道、峠を攻めに行く車がよく通るから、
排気ガスがすごいだろ。
なのに笑顔で頑張ってるんだよ。
聞くと、お母さんが病気だから、
少しでも家計の足しになるように、
って自分で思いついたらしいんだよ。
値段も格安なんで、このあいだ買ってみたんだ。
安いだけあって、あまりもちはよくなかったね。
ちょっと文句言ってみたら、
月曜日に仕入れることが多いから、
その直後なら新鮮なんだってさ。
子どもなのに、大変なんだろうな。
なんだか心配になっちゃったせいかな。
このところ、寝ていてうなされることが多いんだ。
似合わないことをするもんじゃないね。
今週は日曜に仕事が入ってるってのにさ。
【解説】
10歳くらいの少女で
花を売ることを自分で思いついたらしい。
仕入れも自分で行っているようだが…
10歳の少女が交渉して
花を仕入れているとは考えにくい。
となると、
交通事故の被害者のためにお供えされている
路上の花を勝手に拾って「仕入れ」とし、
格安で売っているのだろう。
『月曜日に仕入れることが多い』
ということは、
日曜日に死亡事故が多く、
そこで供えられた花を仕入れているということ?
そのように考えると、
『今週は日曜に仕事が入ってるってのにさ』
という語り手の言葉が危険なように思えてしまう。
次の被害者は語り手なのだろうか…