私が住んでいるアパートには、全部で6人の住人がいます。
1階の一番端っこのお部屋に住んでるお兄さんは、
私の隣のお部屋に住んでいるお姉さんの事が好きみたい。
でも、お兄さんが真っ赤な顔でお姉さんを見ていても、
お姉さんはまるでしらん顔で、鍵を掛けてしまいます。
毎日。毎日。がちゃんと鍵をかけてしまいます。
お兄さんの首にかかっているマフラーはとても素敵なのに。
昔は、おにいさんはよく一緒にお医者さんごっこをして遊んでくれたのだけれど、
今は遊んでくれなくなってしまいました。
おねえさんが前に、「あんな小さい子と遊んでるの?」って話してたからです。
少し寂しいけれどわたしは我慢して、おねえさんとの恋を応援しようと思いました。
お姉さんは、お兄さんがあげたおそろいのマフラーをしているから、
本当はお兄さんの事好きなんですよね。
2階の真ん中に住んでいるお爺さんとお婆さんは、
もうずいぶん耳が遠くなってしまったみたいです。
「おじいちゃん」
昔みたいに私が呼んでも、ぜんぜん気づいてくれません。
ふたりはたまにお庭にでて、日向ぼっこをして居ます。もうずーっとそうしています。
わたしが子供のころからおじいさんもおばあさんも、おじいさんとおばあさんでした。
きっとこれからも、ずっとそうなのだと思います。
1階に住んでいる大家さんは、とってもいじわるです。
私が少し汚れた格好をしていると、すぐに私に水をかけて洗います。
冬はとても水が冷たいのに、ごしごし、ごしごし洗います。
ざらざらのスポンジは痛くて痛くて、私が「やめて」と言っても聞いてくれません。
お兄さんがわたしをここに置き去りにしてから、ずっといじわるです。
昔は優しいお母さんだったのに。
1階の方でドアの開く音がしました。
『お兄さんがわたしをここに置き去りにしてから、ずっといじわるです』
ということと、
大家さんであるお母さんが
語り手をごしごしと洗っていることから
語り手である女の子はお兄さんに殺されたことがわかる。
ごしごしと洗っているのは語り手である女の子のお墓。
お母さんが女の子をどれほど大事にしていたかよくわかる。
お爺さんとお婆さんに関しては、
語り手が呼んでも気が付かないとのこと。
語り手が幽霊となっているため、
声が届かないだけかと思ったが、
『ふたりはたまにお庭にでて、日向ぼっこをして居ます。もうずーっとそうしています』
と書かれている。
『もうずーっとそうしています』
とのことなので、このお爺さんとお婆さんも
もうすでに死んでいると思われる。
そして、おにいさんは語り手である女の子を殺しているが、
おそらくおねえさんも殺している。
お姉さんが毎日ちゃんと鍵をかけていたのは、
お兄さんが語り手を殺したのを目撃し、
お兄さんがお姉さんを見ていたのは、
いつか殺そうと思っていたからだろう。
そして、そこから時が経ち、
『お兄さんがあげたおそろいのマフラーをしているから』
という言葉からおそらくお兄さんはマフラーを凶器にしてお姉さんを殺した。
つまり、登場人物は
・語り手:死亡
・お兄さん:生きている
・お姉さん:死亡
・お爺さん:死亡
・お婆さん:死亡
・大家さん(お母さん):生きている
という状況か。
お兄さんも大家さんもどちらも一階に住んでいる。
『1階の方でドアの開く音がしました』
という表現は
お兄さんがこのアパート全員を殺そうとして出てきたのかもしれないし、
大家さんが語り手の復讐をしようと思って
お兄さんを殺すために家を出たのかもしれない。
どちらにしてもこのアパートで生きている者はいなくなってしまう。
(ただの買い物かもしれないが、終わりが意味深なのでその考え方はナシで…)