毎年夏祭りの日、あたしは娘を連れてマンションの屋上へ行く。
まだ、おさない娘は、お祭りの人ごみの中では花火がよく見えないと思うの。
だから娘がおさないうちは、屋上から花火を見ようと思ってる。
娘は高い所が少し怖いらしく、あたしに今年も聞いてくる。
「ねえママ、今年も上から花火を見るの?」
「そうよ。」
「どうしていつもあそこから見るの?」
「あなたがまだ、おさないからよ。」
「おさないとダメなの?」
「ダメじゃないけど、おさないうちはあそこから見た方が良いのよ。」
「じゃあママ、今年はおさなくないよ。」
「ふふ、何言ってるの。あなたはまだおさないわよ。」
「そんなことないもん!」
ムキになった娘は、もうおさないないことを今年は証明してくれるらしい。
まだ高い所は怖いと思うんだけど、一体何をしてくれるのか楽しみ。
【解説】
『おさない』という言葉が平仮名になっている。
これは母親と娘の言っていることが異なっているため。
母親は『幼い』
娘は『押さない』
の意味で使っている。
つまり、娘は
『母を屋上から押そう』としている。
とはいえ、今回のお話では
マンションの屋上ということなので、
落下防止するための対策がされているはずである。
そのため、幼い娘がいくら押したところで、
母親が落ちることはないだろう。
むしろその言葉の誤解が
母親にとって微笑ましい状態になるのではないだろうか。
「おさない、というのはそういう意味ではないの(笑」
のように。
今回は言葉の誤解を生みだすためのものだろうけど、
『幼い』ではなく、『ちっちゃい』とか、
身長の低さを示したりするんじゃないのかな?
『高い所が少し怖いらしく』
とのことなので、精神年齢的にもまだまだ年相応で幼い、
と言いたかったのかな。