競売物件で築32年5LDKで800万の一軒家を買った。
養う家族もいないし、サラリーマンを辞めて、地方でのんびり古びた家で
過ごすのもいいか、なんて軽い気持ちで、ほとんど勢いで買ってしまったのだが、
引っ越してきてすぐに後悔した。
気味が悪い。
ほとんどの時間を10畳の居間と隣接した6畳の和室だけで過ごす。
他に1階に4畳半の仏間、2階は4畳半の洋間と和室が1部屋ずつと
6畳の和室が1部屋があるが、2階が丸々余計な感じだ。
少なくとも夜中に2階に上がる気が起きない。
引っ越して数ヶ月経ったある夜、2階の4畳半の洋間に用事を思い出し、
探し物をしていた。なかなか見つからずにいたところ1階で電話が鳴った。
電話を取ると無言電話だった。嫌な気分になったが、
再び2階の洋間に戻り、探し物を続けたが見つからない。
6畳の和室だったかもしれないな、と思って、洋間の電気を消した時、
再び階下の電話が鳴った。また無言電話だ。温厚な自分も腹が立ち
「悪戯してんじゃねぇよ!」と怒鳴ってしまった。
自分の怒鳴り声が受話器の向こうから聞こえ、それと同時に
けたたましい足音が2階から降ってきた。
【解説】
『自分の怒鳴り声が受話器の向こうから聞こえ、それと同時に
けたたましい足音が2階から降ってきた。』
何者かが2階に住んでいた。
無言電話は2階で探し物をしている時にかかってくるため、
その何者かが逃げる時間を作るためにかけていたのかもしれない。
洋間を探している時にかけているということは、
和室の方にいたのだろう。
怒鳴り声が受話器を通して聞こえただろうから、
ダッシュで逃げようとした?
ここの部分がかなり曖昧である。
それにしても、
『気味が悪い。』
『少なくとも夜中に2階に上がる気が起きない。』
ということから、
本能的に何かが2階にいると感じていたのだろう。
仮に2階に知らない同居人が本当にいたら
ご飯もトイレもどうしていたのか…と疑問になってしまうが。
語り手はサラリーマンを辞めてのんびり過ごそうとしているため、
あまり家から出ることもないだろうから、
いつトイレに行ったりご飯を食べれたのだろうか…。
けたたましい足音を立てた語り手の知らない同居人は
果たして何者だったのだろうか…。