昨日の夜、ふと目を覚ましたら、窓の外にぼうっと人の首みたいのが浮いてたのよ。
なんかもやもやユラユラしてるし、何より俺の部屋は5階。
もう怖くなって、情けないけど一緒のベッドで寝てた愛犬起こしたら、
「それ」に気付いたのか臨戦態勢っていうか、今にも飛び掛かりそうな姿勢。
いいぞそのまま追っ払ってくれ、なんて無責任な事念じながら、
俺は逆側向いて目と耳必至に塞いでた。
そしたら、いつの間にか寝てたみたいで、ついさっき目が覚めたんだよ。
で、恐る恐る窓の方見たら、白いTシャツが下がってんの。
人の顔がプリントされたやつ。
ああそういえば昨日干しといて、そんで窓全開で寝たんだった。
風で揺らめいてたんだろうな。
そんなもんにビビってたのか俺は、と思ったらつい一人で笑っちゃったよ。
しかしうちの犬があんな頼りになるとは知らなかったよ。
まだ子犬だってのに。
ご褒美にササミでもやろうかね。
姿が見えないようだけど、どこいったかな?
【解説】
『臨戦態勢っていうか、今にも飛び掛かりそうな姿勢』
『恐る恐る窓の方見たら、白いTシャツが下がってんの。
人の顔がプリントされたやつ。
ああそういえば昨日干しといて、そんで窓全開で寝たんだった。』
愛犬は窓に下がっていた白いシャツに飛びかかり、
そのままの勢いで5階から落ちてしまった。
『俺は逆側向いて目と耳必至に塞いでた。』
ことから飛び出した音も落ちた音も聞こえなかったのだろう…。