かなり昔のこと。
ある村落に若い夫婦が住んでいました。
夫は根っからの博徒でしたが、妻は人と争うことが嫌いな働き者でした。
夫はある時、博打で長い槍を手に入れました。
これはかつて有名な武人が使っていたという名槍らしく、
夫は家に帰ってからも上機嫌でこれを眺めておりました。
次の日の朝、夫が目を覚ましてふと槍を見ると、
柄が短くなって、その穂先(刃の部分)がなくなっていました。
夫は、すぐに妻の仕業だと気づきましたが、もう怒りませんでした。
それ以来、夫は博打をやめ、妻とずっと一緒です。
【解説】
『その穂先(刃の部分)がなくなっていました。』
『すぐに妻の仕業だと気づきましたが』
夫の胸に刺さっているため、
妻の仕業だとわかった。
『もう怒りませんでした』
そのまま死んでしまったため、
怒ることもできない。
『それ以来、夫は博打をやめ、妻とずっと一緒です。』
この言葉は霊的な意味かと思ったが、
夫が妻をないがしろにしている部分が見える。
『もう怒りませんでした』
ということは怒ることも多かったはず。
それで霊的に残るとしたら復讐くらいかもしれない。
そのため、ここでの解釈は
「『夫の死体』とずっと一緒にいる妻」
ということだろう。
夫とずっと一緒にいたいという妻の願いだろうか。
もしくは・・・
『妻は人と争うことが嫌いな働き者』
夫の死体が表に出れば、
妻の嫌いな「人(世間)と争うこと)になりかねない。
だから、死体のまま放置していたのかもしれない。