俺の友人(大学で知り合った)Aが
最近彼女と喧嘩したらしい。
喧嘩のきっかけは些細なことだったらしいのだが、
Aが彼女に暴力を振るってしまったことをきっかけに
彼女は家を飛び出してしまいまだ戻って来ていないらしい。
最近のAはずっとそのことを引きずるように表情や態度が目に見える程暗く、
落ち込んでいることは明らかだった。A本人も、
『あんなことしなければ良かった…』
と反省の言葉を時折呟いているのが聞こえる。
そんな友人を見るに耐えられなくなった俺は
思いきってAの部屋で宅飲みをしようと提案した。
最初は『今はそんな気になれない』とか
『彼女の物も散らかったままだから…』などと拒まれたが、
そんな友人の姿があまりにも心配だった俺は
半ば強引にAの家へ押しかけた。
最初は暗い表情をしていたAだったが
やはり少しは寂しかったららしく
酒が入ると俺に泣きながら彼女との喧嘩について話してくれた。
喧嘩の内容は本当に些細なことだったのだが
その時のAは怒りの感情を抑えることができなくなり
気づいたら彼女に暴力を振るっていたという。
そしてそのまま彼女は居なくなってしまったそうだ。
『あんなことしなければ!!
…あんなことするつもりじゃなかったのに…!!』
俺は泣き叫ぶAを夜通し宥めた。
気づけば時間は日付を超えていた。
それに気づいたらAが
『今日は泊まって行けよ』
と言ってくれた。
俺は酒が入っていて眠かったのと
Aの様子が気になったため
お言葉に甘えさせてもらうことにした。
Aの部屋でAはベッドに、
俺はその下で雑魚寝の形でお互いに眠りについた。
うとうとしかけてきた頃ふと、
Aのベッドの下で一瞬何かが光ったような気がした。
よく見ようとベッドの下に手を伸ばそうとした瞬間、
その手をAに捕まれた。
上を見上げると
そこには満面の笑みを浮かべたAの顔があった。
そして…
『そのまま気づかずに帰れば良かったのに…』
俺はこの上にない程の後悔と死を悟った…
【解説】
Aは彼女との喧嘩で彼女をそのまま殺してしまった。
殺してしまったことを後悔するとともに、
誰かに気付かれることも不安に思っていたA.
そこに語り手が半ば強引に押しかけてきたことで
Aの中で何かが吹っ切れてしまった。
そして、語り手を雑魚寝の形で寝かせることで、
ベッドの下の彼女の死体を見つけさせ、そのまま語り手は…
ベッドの下で光ったものは
彼女のピアスとかイヤリングといったもの。
『そのまま気づかずに帰れば良かったのに…』
とAが言いつつも、
語り手が見つけたことに満面の笑みを浮かべているA。
この時の語り手には計り知れない恐怖があっただろう…。
彼女を見つけなければ帰れたみたいだけれども、
満面の笑みを浮かべていることから、
むしろ語り手を殺したがっていたのだろうし、
語り手はするとAはもう人の顔に見えないくらい
恐怖で固まっていそうである。