私リサ、6歳。
リサは最近嬉しいの。だってパパが早く帰ってくるから。
いつもは夜遅いのに、最近は学校から帰ったら毎日おうちにいるの。
いっぱい遊んでもらえるの。だから、リサは今とっても幸せ。
この前はね、パパとママとリサで一緒に洗濯物をたたんだの。
干してあるヤツを部屋に入れて、たたんで、押し入れにしまったの。
リサ、とっても上手にできたんだよ。だからね、今は毎日やってあげてるんだ。
こないだ学校から帰ったらね、パパもママもいないの。
タイクツだからまた洗濯物をたたんであげたの。
でもね、パパとママのズボンはまだたたんでないの。
いつもと違って部屋に干してあったんだけどね、いくら引っ張っても取れないの。
ズボンにくっついてた靴下は取れたんだけどね。
だからまだ部屋にぶら下がったまま。ママに取ってもらわなきゃ。
あ~、パパとママ遅いなぁ…。おなかもすいたなぁ…。
リサね、もう3日何も食べてないの…。
【解説】
『いつもと違って部屋に干してあったんだけどね』
『ズボンにくっついてた靴下は取れたんだけどね』
ズボンに靴下がくっついて干されていること自体がおかしい。
つまりこれはパパとママが首を吊っている。
身長的に靴下までは脱がすことができたものの、
ズボンまでは脱がすことができなかったということ。
しかし・・・パパとママが洗濯物だと
勘違いすることなどありえるのだろうか?
いつもと違う洗濯物、
そして上を見上げれば顔も見ることができるはずである。
死んでいることを受け入れられずに、
現実逃避してしまったようにも感じてしまう。
文章自体も漢字を使って構成されている。
パパとママの死が受け入れられずに
6歳の自分に退化してしまった、
と考えると非常に悲しい話である。