俺は、仕事の都合上地方に出ていた。
海があり、自然が多くて自分も気に入っていた。
その日は、スケジュールが入っていなかったので、
俺は海を眺めようと海岸を歩いていた。
すると、砂浜に一人の少女がうずくまっている。
小四くらいでしょうか。
必死になにかを探しているようなので、
話しかけてみることにした。
「こんにちは」
俺が営業で鍛えたスマイルを振りまくと、
少女は顔をあげ、
「こんにちは」
と言って、目をまた砂浜に戻した。
「お嬢ちゃん、なに探してるの?」
「幸せの丸い貝だよ」
「なにそれ?」
「わかんない」
「パパとかママに頼まれたの?」
「うん、祭りに使うんだって」
「おいしいの?」
「うーん、食べる人もいるみたいだけど……
わかんない」
「そっかー」
どうしても、
その幸せの丸い貝が気になった俺は、
その少女に頼んで家に案内してもらった。
少女の家にはいると、
もう祭りの準備ができてるのか、
たくさんの料理でもてなしてもらった。
お酒もいただき、
そこで寝てしまった。
起きると、
すでに祭りが始まっていた。
近くの人に、
「幸せの丸い貝ってなんですか?」
と、聞くと
「それならもうここにあるよ」
あぁ、なるほどね。
そう言われれば、ここにあるな。
にしても、変わった風習なんだな。
【解説】
幸せの丸い貝
→贄
少女は生贄を探しており、
語り手がその生贄となった。
語り手は生贄になったと自覚しているのに
冷静さが半端ない。
ここまで肝が座っていると、
それはそれで怖いものである。