「あそこにフラッグ立てたからな」
「あそこってどこだよ?」
「目ぇ悪いな。
スイカ割りしてるところの手前だよ」
「う~ん……あっ、あれか!」
「分かったか?」
「おう。でもなんでビーチフラッグなんだよ?」
「んなもん男は黙ってビーチフラッグだろうが。
これ海の常識。
ほら、さっさと寝ろ」
あっつい砂に体を押し付ける。
うへぇ~、思ってたよりきついな。
「よーし、じゃ3、2、1で行くぞ。3、2、1!」
パサッ
掛け声と共に体が風になる。
くっ! 結構速いじゃねぇか!
「う、おおおおおッッ!」
あと少しだ!
跳ぶしかない!
とどけぇぇぇ!!
バサッー
「取っ……って!?」
すべり過ぎる。
「右右、行き過ぎ!そうそこ!」
ちょっ、待て!?このままじゃ……。
そう思った矢先、
俺の頭に何か丸く硬い物が当たった。
「いけぇッッ!!」
それとほぼ同時に指示役が叫ぶ。
そうか、俺が掴んだのは……
ドシャッ!
「よっし、手応えあり!」
【解説】
語り手は
スイカの代わりに頭を割られてしまった。
スイカ割りをしていた人は
手応えがあったから喜んでいるが
目隠しを外したら血の気が引いていくことだろう。
人の頭を割ってしまったのだから…
これでスイカ割りをしていた人が
罪に問われたら可愛そうである…
それにしても、
なぜスイカ割りの近くにフラッグを置いたのだろうか?
スイカ割りの近くに
フラッグを置いていたのは
「スイカではなく、語り手の頭を割ってほしい」
という願望があったのではないかと思ってしまう。