私の師は偉大な音楽家でした。
師に会ったのは私が小さい時、
そこから音楽に触れるようになりました。
本当に素晴らしい音楽家でした。
何故…何故死んでしまったのか…
あんなに優しかった師は、
もうこの世にはいない。
いきなりいなくなってしまうなんて…
そんな事考えられるはずがありません。
ドレミファソラシすら分からなかった私に、
時間を掛けてでも丁寧に教えて下さったのに…
悼辞を終え、
師の葬式は無事に終わった。
私の師は、
何者かに殺されたらしい。
頭も良く、
本当に素晴らしい音楽家だったのに…
随分と貧乏な暮らしを送っていたらしいが、
今となってはどうでもいい事だ。
何で、殺される理由がどこにあるんだ…
悔し涙を堪えつつ師の遺品を遺族と整理していると、
創りかけの楽譜が出てきた。
『ドんレんドうしシ』
所々に平仮名?
偉大な音楽家ともなれば、
難解な言葉を使うのか。
楽譜をずっと見続けていると、
師に習った事を思い出す。
………?
これは…楽譜、だよな?
私はすぐに、師の家を飛び出した。
【解説】
『ドレミファソラシド』は
日本語の『はにほへといろは』に対応している。
ド:は
レ:に
ミ:ほ
ファ:へ
ソ:と
ラ:い
シ:ろ
ド:は
これに習って
創りかけの楽譜を読んでみると、
ド:は
ん:ん
レ:に
ん:ん
ド:は
う:う
し:し
シ:ろ
つまり、
「犯人はうしろ」
となる。
それに気づいて
語り手は師の家を飛び出した。
「犯人はうしろ」というのは
犯人は後ろにいるということではなくて、
「うしろ」という名字で
その人が犯人だと伝えたいのだろうか?
語り手がどのように解釈したのか
気になるところである。