「いよいよ明日だな」
「ああ、そうだな」
出発の前夜、
俺達は馴れ親しんだ公園に集まっていた。
俺が生まれ育った町は、山中の小さな町。
ろくな産業もなく、住人は皆、
農業や伝統工芸品の作成で、生計を建てている。
大学すらない本当に地味な町だ。
でも、ここで採れる山菜や岩魚な絶品なんだぜ!
俺達は、大学入学を控えた高校3年生だ。
さっき言ったように町に大学がないから、
みんなは都会の大学に行き、寮で生活するのだ。
そんな出発の前夜、
俺達仲良し5人組は、
お別れ会をしていた。
赤ん坊の頃からずっと一緒にいた仲間。
バスケ、剣道、サッカー…
入る予定の部活、行く県は違えど、
みんな新天地での生活に期待している。
今までの思い出を、語り合う俺達。
「あの村長もしばらくは見納めだな」
「あいつなー。
こんな町で暮らしてて、よくあんな金持ってるよなー。
あの婆さんの家だけ豪華過ぎるんだよ!」
そんな話をしていると、
例の村長が通りかかった。
「あんたらも明日いよいよ出発だね。
最初はアルバイトも見つからないじゃろ」
と言って、変な山菜を渡してきた。
見た事ない山菜だ。
「これは高級な山菜じゃ。
あんたらが行く所は都会じゃから、山菜は珍しい。
こーゆ物の取引をしてる市場に行けば、高値で買い取ってもらえる。
少ないが、足しにしなさい」
と行って、僕達に渡してくれた。
「あざーす!」
「意外といい人だな、あの人!」
「とにかく、明日から暫くは会えないけど、俺達はずっと友達だ!
いつかまた会おう!」
再開を誓い合い、俺らは旅立った。
数ヶ月、彼らは思いもよらぬ所で再会する事となる…
【解説】
尊重が渡したのは大麻。
損著帳は麻薬の密売人だったため
大金を持っていた。
語り手達は大麻を高値で取引してしまったため、
数カ月後に刑務所で再会した。
渡された高級な山菜が大麻なことは知らなくても
取引する場所は怪しさがあったのではないだろうか?
意外と普通の場所だった?
それとも、怪しいけれどもお金に負けてしまった?
なぜ取引してしまったのかが気になるところである。