僕はドッキリが大好きだ。
だから友達などに毎日のように仕掛けていた。
靴にゴキブリを入れたり、
嘘でラブレターを書いたり、
プールの授業中パンツを隠したこともある。
我ながらやり過ぎって、
思ったこともある。
そして今日も仕掛ける。
ん?
みんなの様子がおかしいぞ?
「どうした?」
俺は聞いた。
友達の手にはナイフ。
周りの生徒も凶器をそれぞれ持っている。
「一体どうしたんだよ」
俺は声を張り上げ尋ねる。
友達が答えた。
「お前を殺す…
もううんざりなんだよ」
へっ?
今の一言が頭に繰り返し響いた。
「へっ、へへっ、ドッキリだろ?
ば、バレバレなんだよ。
そうかいつものお返しだな…
そうなんだろ?先生」
先生は目を閉じて首を振った。
先生の手にはアイスピック…
俺は確信した。
本気で殺される。
俺は逃げた。
町を走り、
公園のトイレに隠れた。
俺のポケットにはドッキリに使用しようと、
しまっていたハサミ…
こんなんであの人数、
倒せるわけない。
その時トイレに大勢の足音が入ってきた。
「いるんだろ?諦めろよ」
友達の声だ…
「なっなんで!?」
俺は諦めた。
手に取ったハサミで自分の喉を刺した…
トイレの扉が開く。
なぜかみんな笑っている。
その時まだ意識がある俺の耳に、
思いもしない言葉が入ってきた。
「なんちって…」
【解説】
ドッキリであったのに、
語り手はハサミで自分の喉を刺し、
自殺してしまった。
…とはいえ、
これは本当にドッキリだったのだろうか?
懲らしめようとは思っていただろうけど、
「死んでくれればなお良い」
なんて思っていたのではないだろうか…。
トイレの扉が開き、
みんなが笑っている姿が見えているのであれば
ハサミで刺して血だらけの姿が見えているはず。
それなのにそこまで大きな反応はない。
まだきちんと見えていなかった可能性ももちろんあるが、
少し恐ろしくなってしまう。
まぁ、それよりも、
語り手がドッキリだと思っていたのは
タチの悪いイタズラであり、
ドッキリなんて呼べるものではなく
イジメとも言えるものである。
やっている本人は楽しんでやっているだけだと思っていても、
やられている側からすればたまったものではない。
ドッキリと言えば、
先生達のやったこと自体がドッキリと言えるだろう。
その結果、自殺してしまったわけだが…
本当に殺されると感じたということは
やはりそれなりのことをしていたという認識があった、
とも言えるだろうか。
これは、自業自得とも言えてしまう結果である。