『ほらケンちゃん起きて』
ママの声がする……
目を覚ますと目の前にママの顔があった。
『もうこの子ったらやっと起きたわ』
『お前は、ほんとどこに行っても寝坊助だなぁ』
そういいながらパパとママは笑った。
『あれここどこ?』
『御父さん義母さんに挨拶に行くんだよ……ってさっき言っただろ』
『??パパママなら目の前にいるよ』
『ケンちゃん違う違う。
おじいちゃんおばあちゃんのところに行くのよ。
もうあなたったら子供に御父さんって言ってもわからないでしょ』
『あぁ確かにそうだなぁ(笑)
さて御父さんどこにいるかなぁ…』
『あなた……出来ちゃった婚なんて怒られないかしら…
あの人昔っからそういうの嫌いだったの』
ママが急に心配そうな声で言った。
『……大丈夫……だろ』
そう言ったパパの声も心配そうだった。
確かにママからおじいちゃんは怖い人とよく聞いていた。
『あっ……』
パパが立ち止まった。
パパの見てる方を見ると人影が見えた。
『お父さん……』
ママがそう言った。
『あれがおじいちゃん?』
そういえばおじいちゃんに実際に会うのは、今日が初めてだ……
お父さんがおじいちゃんに向かって歩き出した。
おじいちゃんは、畑仕事をしていた。
育ているのは……なんかよく解んなかった。
『御父さん』
パパが言うとおじいちゃんはこっちに振り返った。
『お父さん…久しぶり…』
おじいちゃんの顔は、ママの言ってた通り恐かった。
『お前ら何でここに来…………その子は…』
おじいちゃんがぼくを見てものすごい顔になった。
『えっと………私達の子供なの』
『どうせ来るならみんな一緒がいいと思って……これを期に報告しよ…』
その時おじいちゃんがパパを殴った。
パパは倒れこんだ。
『キャァァーーー』
ママが叫んだ。
『お前は本当にろくでもない奴だ』
そう言いながらおじいちゃんは倒れたパパを蹴とばした。
『止めてお父さん』
ママがおじいちゃんを止めようとした。
でもおじいちゃんはママを振り払った。
ママも倒れこんだ。
ぼくは怖くて震えてた。
そしておじいちゃんはぼくを見た。
『ひっ』
おじいちゃんは、ぼくを抱えた。
『お父さん止めて』
おじいちゃんはぼくを抱えたまま歩き出した。
何とかか抜けだそうとしけど力が強すぎて無理だった。
そして………崖についた。
怖くて声も出ない。
そしておじいちゃんは、ぼくに言った。
『お前は、この世界に必要ない』
そう言ってぼくを投げた。
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』
ママがこっちに走ってきた。
でももう遅かった。
ぼく死んじゃうのかなぁ…
その時おじいちゃんが悲そうな顔をした。
………………………………
目を覚ますとぼくはベッドのうえにいた。
ここどこだろう……。
横を見ると……パパとママが青白い顔で寝ていた。
【解説】
死んでしまった人が行く世界の御父さんに会いに行った。
つまり、三人は一家心中。
御父さんがパパに暴力を振るったのは、
子供を巻き添えにして一緒に死のうとしたから。
『お前は、この世界に必要ない』
というのは、
「まだ死んではいけない!生きろ!」
ということ。
崖から突き落とすことで、
現実に魂を戻した。
しかし、パパとママはそのまま死んでしまった。
語り手は今後、
「見捨てられた…」
と思うのか、それとも
「おじいちゃんに助けてもらった」
と思うのか。
これが今後の人生にどういう影響を与えるのか気になるところである。