『はぁーもうこんな時間か…』
気づいたら夜中になっていた。
オフィスには自分だけで、
小声でも響くくらい静かだ。
やっとこの時間になり
夕方から上書き上書きで進めてきた会議用資料を作り終えた。
ファイルを保存し時計を見ると
2時をまわっていた。
この時間だと帰れないから
会社に泊まろうと決め
ちょっと喫煙所で休憩。
ガタン!!!!
『おっと!!』
喫煙所のソファーでウトウトなっていた。
自分の物音で目が覚めたとはいえ
誰もいない静かなオフィスだけに心臓バクバクだ。
戻ってきて会議用資料のファイルを閉じようとしたら、
上書きで進めてきたため
『会議用資料は変更されていますが保存しますか？』
といつもの表示が出てきた。
さっきので心臓バクバクだった俺は
間違って保存しないをクリック。
『あぁーーーーー』
と叫んでしばらくの沈黙の後、
血の気がひいた。
時計を見た。
あとすこし…
今日は頑張って朝まで起きておこうと思った。
【解説】
休憩前に保存しているはずなのに
『会議用資料は変更されていますが保存しますか？』
とい表示が出てきている。
つまり、保存したあとに
語り手以外の何者かが
その資料に手を加えたということ。
何者かがその資料に手を加えていたとはいえ、
保存しなければよいだけだから、
保存しないを選択した語り手は正解だったと言えるだろう。
すでに、資料は完成しているのだから。
ただ、資料を保存しないを選択したことにより、
完成しているはずの資料を見て、
「一体何が欠けているのだろうか？」
とずっと頭を悩ませることになるだろう。
それが一番怖いところかもしれない。
