とある国の大富豪が、
ボディガードを募集していた。
すると、2人の屈強な男が
「我こそは」と名乗り出た。
けれど、採用されるのは1名だけ。
どうしたものかと考えた末、
残酷な大富豪は不気味な笑みを浮かべて、
おもしろ半分に候補者にこう命じた。
「そこの入れ物には強力な毒が入っている。
まずは指をどっぷりと浸すのだ。
それから指を口に入れてもらおう」
2人は
「恐るるものなど何もない」
と、同時に勢い良く指を毒入りの容器につっこんだ。
それから大富豪が命じた通りに指を口に入れた。
候補者の1人はみるみる青ざめ、
口から泡を吹きながらその場に膝をついたものの
「どうだ、俺はまだ生きているぞ。
お前にこれが耐えられるかやってみろ」
と口角を上げてニヤリとし、
挑戦者を煽った。
ところがである。
もう1人の候補者は余裕の表情で、
まるで水飴を食べるかのごとく自らの指をぺろぺろと舐めている。
口から泡を吹きながら、男はわめいた。
「そ、そんなバカな…!貴様、一体何をした!?」
するともう1人は、
見下すように横目で挑戦者に一瞥をくれ、
自分の行動を説明した。
説明を聞いた大富豪は大笑いして、
毒に倒れなかった方の男を護衛として雇ったのであった。
【解説】
倒れなかった男の方は
毒に浸した指と別の指を舐めた。
「雇い主は、毒に浸した指と同じ指を口に入れろとは言っていない。
このように機転を利かせることもボディーガードとして大事だ」
とでも言ったのだろう。
それにしても、おもしろ半分で
強力な毒を舐めさせるとか、
本当に残酷な大富豪である…。