我が家の家の前には大きな湖があり、
湖の周りにたくさん家が建っている。
水が澄んでいて、魚もたくさん泳いでいる。
我々を含め、
周辺の住人は夏場はそこで泳いだり、
釣りをしたりしながら過ごすのが好きである。
天気のいい夏の日はだいたい庭で昼食を取る。
母がアヒルの丸焼きを作っているのを待ちながら、
私たちは湖の浅いところで水浴していた。
父「見てごらん」
父の指す先には、一人の男性。
橋の上から湖に飛び込みをしようとしている。
バシャーン!
指先から見事な着水。
5.5!6.0!
などと点数を付けてはしゃいでいた。
母「お昼できたわよー。運ぶの手伝って」
私たちは皆、母に呼ばれて、
料理や食器を運ぶために台所へ向かった。
父「白ワインがいい?赤ワインがいい?」
夫「僕がアヒル切り分けるよ」
母「あら、アヒルの匂いを嗅ぎ付けて猫が来たわ」
私「私、東京から来たから、
自然の中でお昼ご飯って憧れだったんです」
母「郊外だから空気もきれいだしね」
父「今日は静かだなあ…いい週末に乾杯」
皆「乾杯」
父「さあ、食事がすんだらバーニャ(サウナ付きの木造の小屋)で昼寝でもしようか」
翌朝。
母「ねえ、さっきお隣の方に聞いたんだけど、
最近マナーの悪い釣り人がいるみたいよ。
川底の方にいる大きい魚を捕るために、
大きな網を数カ所にしかけてるんですって」
私は母と一緒にサクランボの種を取るのに夢中になっていたが、
はじかれたように父が外に飛び出していくのがわかり、我に返った。
そういえば、
今日はこれから雨になるって天気予報で言ってたな。
外に洗濯物干してあったんだっけ?
私は肩をすくめて、
またサクランボの種取りに没頭し始めた。
【解説】
男性は湖に飛び込んだが、
その後、特に音がしておらず、
『今日は静かだなあ…』
と言っている。
しかし、飛び込んだあとには水面から上がるために音を立てるだろうし、
そのまま泳いでいても音を立てるだろう。
それなのに音はしていない。
それはマナーの悪い釣り人がしかけていた
大きな網に絡まり
身動きが取れなくなってしまったから。
そのため、飛び込んだ男性は
そのまま亡くなってしまっただろう…。
父が外に飛び出していったのは
それに気がついたから。
静かに過ごしていた一日が
一転して最悪な一日に変わりそうである。