久しぶりに自室の掃除をしていると、
押し入れの奥から古いぬいぐるみが出てきた。
くまのぬいぐるみで、
ベージュ色だったはずの布地は茶色に変わり果て、
あちこちから綿がはみ出している。
たしか小学生くらいの頃にこのぬいぐるみが大好きで、
散々連れ回した結果ボロボロになっちゃったんだよね。
こんな所にしまっていたのか、懐かしいな。
大事にとっておきたいけど、
飾れるほど綺麗じゃないし、
可哀想だけど捨てちゃうかな。
燃えるゴミの回収は今晩だから、ちょうどいいし。
さーて、引き続き部屋の掃除やっちゃおうかな。
首の辺りに違和感を感じて目が覚めた。
時刻は25時過ぎ。
首を触ると、何か糸のような物が巻き付いている。
簡単には千切れない……まさかピアノ線……?
結び目はかなり固結びされてて、
自力では解けそうにない。
ん?糸が窓の外に繋がってる?
この部屋は二階で、外にはゴミ置き場がある。
一体誰がどうやってこの糸を……?
家の前に止まっていたゴミ収集車が走りだす音が聞こえた。
【解説】
使い古された人形やぬいぐるみには
魂が宿ると言われている。
このぬいぐるみにも魂が宿り、
語り手も一緒に連れて行こうと首に糸を巻き付けた。
そして、その糸が繋がる先はぬいぐるみ。
そのため、ゴミ収集車が走り出すことで
これから語り手の首が吹き飛ぶことになる。
ぬいぐるみはただ単純に一緒にいたかったのか、
「いつも一緒にいるためにも一緒に死のう」と首に糸を巻き付けたのか、
それとも、「私を捨てるならお前も…!」と憎しみから生まれたものなのか…
理由はわからないが
どの理由にしても語り手が死んでしまうことには変わりない。
久しぶりに押し入れから出してもらったのに
そのまま捨てられてしまったら悲しいもの。
こう考えてしまうと物を捨てられなくなってしまうなぁ…。