みるみるうちに、
眼下の大地が離れていく。
地上で見上げる人々が、
皆こちらを指差して何かを叫んでいるようだ。
バーナーの炎はその勢いを衰えさせる気配無く、
ゴウゴウと燃え続けている。
雲間に顔を出す太陽が、
容赦無く僕の肌を焼いていく。
吹き付ける冷たい突風が、
気球を、僕の身体を、弄ぶ。
……そろそろ限界だな……
僕は静かに脱力した。
【解説】
語り手は突風に煽られてカゴから落ちてしまい、
気球にぶら下がった状態になってしまった。
『地上で見上げる人々が、
皆こちらを指差して何かを叫んでいるようだ』
これは今まさに落ちそうになっている語り手を見て
悲鳴のようなものを叫んでいる。
『僕は静かに脱力した』
カゴを掴んでいるのも限界になり、
語り手はつかまっている手を離して、
地上に落ちていくことに…
高所恐怖症の私としては、
観覧車も絶叫マシーン…
それどころか、
フジテレビの長いエスカレーターすら
怖くて足がすくんでしまう…
なので、気球に乗るなんて想像もしたくない…
…想像もしたくないのに、
気球から落ちて地上に落ちることを想像してしまって
震えてしまう…