昨夜から緊張して一睡も出来なかった。
何故なら‥‥‥
『旅行、超楽しみだね。』
『そうだな、付き合ってから初めてだもんな、旅行なんて。』
『あーーー、今から既にテンションMAXなんだけどーっ!!』
『ははは、今からテンションMAXでどうするんだよ。』
‥‥そう、俺にとって初めての旅行だからだ。
事前に目的地までの道のりを調べたり、
到着予定時間を計算したりしてる内に、
ろくに睡眠も取れないまま、
今に至っている‥‥‥。
完全に俺の自己管理ミスだ。
『‥‥外、真っ暗だね。つまんないね。』
『まぁ、その分、旅費が浮いたんだから、文句言わないの。』
『そうだね。‥‥どのくらいで到着するのかな。』
『だいたい、4時間くらいじゃないかな。
途中でちょくちょく休憩挟むし。』
目的地は、
有名な大型アミューズメントパーク。
日中の移動は渋滞がつきものだ。
しかし、夜間の移動であれば、
そんな渋滞による苛立ちも気にはならない。
しかし‥‥
『ふぁーあ‥‥。
なんか、テンション上げ過ぎちゃったみたい。
眠くなってきちゃった‥‥‥。』
『寝てていいよ。』
『寝ないの?』
『俺はまだ眠くないから、大丈夫だよ。
それに、お前の寝顔も見たいしさ。』
『バカ。‥‥ありがとう。
じゃあ、少し寝させてもらうね。』
『うん。ゆっくり寝て、明日に備えよう。
俺も、もう少ししたら寝るよ。』
『うん、じゃあ、お先におやすみ。』
‥‥‥眠い‥‥‥。
眠気を吹き飛ばす為のブラックガムは、
とうの昔に尽きていた。
気を抜くと瞼の閉じる間隔が短くなっていた。
ひたすらに続く直線道路。
夜間ということもあり、車外の景色は変わらない。
大小様々な車のテールランプくらいが、唯一の変化だ。
‥‥‥‥‥。
『う‥‥ん‥‥。』
『‥‥‥はは、楽しい夢でも見てるのかな。
可愛い寝顔して。さてと‥‥。
そろそろ俺も寝ようかな‥‥。』
‥‥‥、瞼の閉じている時間が長くなって‥‥きた‥‥。
‥‥ダメだ‥‥意識を保つことが出来ない‥‥‥
『おやすみ。明日は楽しい1日にしような。』
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥
‥‥おやすみなさい‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
俺は眠りに堕ちた
【解説】
『』の会話は
深夜バスに乗って旅行に行くカップルの会話。
『‥‥外、真っ暗だね。つまんないね。』
『まぁ、その分、旅費が浮いたんだから、文句言わないの。』
という会話から、
格安の深夜バスに乗っていることがわかる。
『』のない言葉は
もう一人の「俺」である
運転手の言葉。
『‥‥そう、俺にとって初めての旅行だからだ』
『事前に目的地までの道のりを調べたり、
到着予定時間を計算したりしてる内に、
ろくに睡眠も取れないまま、
今に至っている‥‥‥』
深夜バスによる旅行の運転は初めてのため、
緊張して色々と調べすぎて、
ろくに睡眠が取れなかった。
そして、運転手は
『俺は眠りに堕ちた』
ため、
居眠り運転により
このあとバスの事故が起きてしまう。