僕の趣味は夜の散歩。
今日もゆっくり歩き続ける。
街灯もない夜道は真っ暗でほとんど見えないけれど、
毎日歩いている道だし、真っ暗にも慣れたので平気だ。
ふと見上げると、
窓から女の子が顔を覗かせている。
明るい部屋の逆光で、
顔はよく見えない。
僕が軽く手を振ると、
彼女はかくりと頷いて、
手を振り返してくれた。
何となく嬉しくなって、
僕は歩く足を速める。
窓の光の漏れる位置に差し掛かったところで、
僕はもう一度窓を見上げた。
彼女の姿はもう見えなくなっていて、
がっかりしたのだけれど。
【解説】
『街灯もない夜道は真っ暗でほとんど見えないけれど』
で逆光の彼女が
どうして語り手が手を振っていることを認識できたのか?
それにしても、
顔を覗かせている女の子に手を振っている状況は
なんだか不審者のように見えてしまう…
最近はなんでもかんでも不審者にされてしまうところがあるから、
恐ろしいものである。