「くっそ、此処は何処だ!?」
肝試しの最中、
俺は二人組を組んでたYと道に迷ってしまった。
目印があるとか訊いてたけどわかりにくすぎる!
一体何処をどう行けば出られるんだ!?
「きみがわるい」
一緒に組んでいるYは、
ガタガタ震えながらそう言った。
気味が悪いなんて此処にいりゃ当たり前だろ!
肝試しのために存在するかのように、
昼でも薄暗い獣道一歩手前の田舎道だ。
人っ子一人いやしないし、
そもそも道に迷ってるんだから
先生もクラスメートもいるはずがない。
ああくそ、
せめて迷ったのがコイツとでなければ
もっとマシだっただろうに運が悪い。
クラスの中でも常にパシリ役、
面倒な役割を押しつけられる
いじめられっ子一歩手前なのがYだ。
勉強も運動もぱっとしないし、
しかもこのびびりな性格が本当にウザイ。
「きみがわるい」
うっせーよ!
さっきからそればっかりじゃねーか!!
大体、肝試しの道順の目印を設置する係、
そもそもお前だったじゃねーか!!
わかりにくい目印なんて目印じゃねーよ!
マジつかえねー!!
くっそ、これで遭難して死んだら
全部お前のせいだからな!!
ぜってー恨んでやるぞ、
戻ったら覚えてろ馬鹿野郎!!
【解説】
Yが言っている
『きみがわるい』
は
「気味が悪い」
ではなく、
「君が悪い」
Yは
『クラスの中でも常にパシリ役』
らしいが、語り手は
『いじめられっ子一歩手前』
と言っているため
語り手がパシリにしていたかは不明。
しかし、Yは語り手を恨んでいるようだ。
Yはわざとわかりにくい目印を設置し
(そもそも目印なんて本当にあったのか?)、
人気のないところで語り手を殺そうとしている。
Yからすると殺すのは語り手ではなくて
よかったのかもしれない。
肝試しのペアは適当に決められることが多いと思うし、
語り手もYとのペアを嫌がっている。
なので、この二人のペアは偶然だったのだろう。
Yはペアとなった人を誰でもいいから殺そうとしていた。
その犠牲になったのが語り手ということに…。
クラスの人全員に恨みを持っていた可能性がある。