【意味怖】意味がわかると怖い話まとめ

【意味怖】意味がわかると怖い話を読んで頭の体操を!捉え方は人それぞれであり、答えは一つであるとは言えません。解説も答えではなく、一つの捉え方。あなたがどう捉えたかを教えていただけると幸いです。


【意味怖】行商人の荷物

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行商人の荷物に紛れての密入国計画は早くも暗礁に乗り上げた。

 

「関所の人間とは知り合いで、顔を見ればすぐ通してもらえる」

 

などと商人は言っていたが、
どうやら担当者が替わったらしく
馬車のすぐ隣で揉めている。

 

「悪いが俺がお前を通すのは今回が初めてだ。
確認させてもらう」

 

「いえ、無闇に麻袋を開けたり叩いたりしますと
品物がダメになってしまいます」

 

「ならば品名を述べよ。
以前から申請されている品物と、
今回の積荷に相違がなければ通してやる」

 

商人が従うべきか悩んでいる様子が
麻袋の中からもうかがえた。

 

一体何を融通の利かないことをしているのだ。

 

荷台には他にも荷物があるのだから、
いくらでも誤魔化せるだろうに。

 

身動きも取れない袋の中、
暑さと息苦しさも合わさって次第にいらだってきた。

 

しばらくして、
ようやく商人が一つ目の品名を言うが早いか、
自分は全身をバネにしてその上に乗っていた荷物を
力の限り撥ね付けた。

 

 

【解説】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商人が取り扱っている品物は人間だった。

 

暑くて息苦しいのは

荷物の中身は全て人間であったため。

 

しかし、荷物の中に紛れ込んでいる語り手は

密入国をするために荷物に入っているだけで、

品物になるなどとは知らなかった。

 

関所の担当者には

『ならば品名を述べよ』

と言われているだけなので、

申請している品物を言えばいいだけ。

 

しかし、それを言えないとなると、

申請していた品物自体が「人間」だったのだろう。

 

品物が人間だと積み荷にいる者たちにばれてしまったら、

『密入国計画』は嘘だとばれてしまい、

一斉に逃げ出してしまう可能性がある。

 

たくさんの積み荷があるとしたら

そこで暴れて死んでしまう者も出てしまうかもしれない。

 

そのため、商人は品物である「人間」と言うことをためらっていた。

 

しかし、

商人が観念して品物である「人間」と言った瞬間に

語り手はそれを理解し、

語り手は全力で逃げるために荷物を力の限り跳ねのけた。

 

 

品物になるということは、

どんなことをされるかわかったものではない。

 

そのため、語り手は死ぬ物狂いで逃げるだろうし、

「密入国」ができるという希望から

一気に絶望へと叩き落とされたのだから

その時の恐怖は計り知れないものだろう…。