僕は町外れにある寂れた民家にしのびこんだ。
幽霊が出るという噂があり、
興味があったからだ。
何年も人が入っておらず、
家のまわりは草木でぼーぼー。
探検のようなワクワクした気持ちで入り込む。
窓などは全てちゃんと鍵が締めてあったので、
中まで草木や虫が入って来ていることはないようだ。
その代わりほこりまみれだが…
中は家具もなく殺風景だ。
面白いものも特に見つからぬまま部屋を一通り見て回り、
二階の子供部屋に行く。
押し入れの中に日記のようなものが置いてある。
ほこりを払いながら、ページをめくる。
「4がつ1日。今日からまい日、日きをつけます。」
子供の字だ。小学校低学年くらいだろうか。
ページをめくっていく
「6月18日。がっこうに行きたくない。こころもからだもいたい」
疑問に思いながら読み進める
「7がつ4日。たけし君たちがなぐってくる。
お父さんもさけをのむとなぐってくる。もう死んでやる」
そこで日記は途切れた。
子供がイジメを苦に自殺、
家族はその後引っ越したと言った具合だろうか
かわいそうに…
ノートの裏を見ると
見覚えのある名前を見つけたが
思い出せない
【解説】
『見覚えのある名前』
というのは語り手の名前。
そして、語り手は
『子供がイジメを苦に自殺』
と予想しているが、
実際に語り手はこれを理由に自殺した。
つまり、日記を書いていたのは語り手であり、
『幽霊が出るという噂』という幽霊も
語り手のことである。
語り手は死んでしまった時はまだ幼く、
ひらがなばかりの日記だったのに、
自殺してから漢字を書けるようになったんだなぁ…